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November 27, 2025 Vol. 393 No. 21

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ANGPTL3 を標的とする CRISPR-Cas9 遺伝子編集の第 1 相試験
Phase 1 Trial of CRISPR-Cas9 Gene Editing Targeting ANGPTL3

L.J. Laffin and Others

背景

アンジオポエチン様蛋白 3(ANGPTL3)は,リポ蛋白リパーゼと内皮リパーゼを阻害する.ANGPTL3 の機能喪失型遺伝子バリアントは,低比重リポ蛋白コレステロール値とトリグリセリド値が低く,アテローム動脈硬化性心血管疾患の生涯リスクが低いことと関連している.

方 法

肝臓の ANGPTL3 を標的として機能喪失型変異を導入するための,クラスター化された,規則的に間隔があいた短い回文構造の繰り返し–Cas9 エンドヌクレアーゼ(CRISPR-Cas9)メッセンジャー RNA(mRNA)とガイド RNA を封入した脂質ナノ粒子製剤である CTX310 の,安全性と有効性を評価する用量漸増第 1 相試験を行った.コントロール不良の高コレステロール血症,高トリグリセリド血症,混合型脂質異常症のいずれかを有し,最大耐用量の脂質低下療法を受けている成人に,CTX310(0.1,0.3,0.6,0.7,0.8 mg/kg 体重のいずれか)を単回静脈内投与した.主要評価項目は,用量制限毒性などの有害事象とした.

結 果

15 例が CTX310 の投与を受け,60 日間以上追跡された.CTX310 に関連する用量制限毒性はみられなかった.重篤な有害事象が 2 例(13%)に発現し,1 例は椎間板ヘルニアで,もう 1 例は 0.1 mg/kg を投与後 179 日目に突然死した.注入に伴う反応が 3 例(20%)で報告され,ベースライン時のアミノトランスフェラーゼ値が高かった 1 例(7%)ではアミノトランスフェラーゼがベースライン値の 3~5 倍まで一過性に上昇し,4 日目をピークに,14 日目までにベースライン値に戻った.ANGPTL3 値の平均変化率は 0.1 mg/kg で 9.6%(範囲 -21.8~71.2),0.3 mg/kg で 9.4%(範囲 -25.0~63.9),0.6 mg/kg で -32.7%(範囲 -51.4~-19.4),0.7 mg/kg で-79.7%(範囲 -86.8~-72.5),0.8 mg/kg で -73.2%(範囲 -89.0~-66.9)であった.

結 論

ANGPTL3 の編集は,有害事象が少なく,ANGPTL3 のベースライン値からの低下をもたらした.(CRISPR セラピューティクス社から研究助成を受けた.Australia New Zealand Clinical Trials Registry 番号 ACTRN12623000809639)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2025; 393 : 2119 - 30. )