August 21, 2025 Vol. 393 No. 8
乳癌の内分泌療法に伴う血管運動神経症状に対するエリンザネタント
Elinzanetant for Vasomotor Symptoms from Endocrine Therapy for Breast Cancer
F. Cardoso and Others
ホルモン受容体(HR)陽性乳癌の治療として,あるいは乳癌のリスクが高く,予防のために内分泌療法を受けている女性は,血管運動神経症状(自律神経失調症)を有することが多い.ニューロキニン標的療法薬エリンザネタント(elinzanetant)は,血管運動神経症状の治療に有効であることが示されているが,このような集団における効果に関するデータは少ない.
HR 陽性乳癌の治療,または乳癌予防のための内分泌療法に伴う,中等度~重度の血管運動神経症状を有する 18~70 歳の女性を対象に,第 3 相試験を行った.女性を,エリンザネタント 120 mg を 1 日 1 回,52 週間投与する群と,プラセボを 1 日 1 回,12 週間投与したあと,エリンザネタント 120 mg を 1 日 1 回,40 週間投与する群に,2:1 の割合で無作為に割り付けた.主要評価項目は,中等度~重度の血管運動神経症状の 1 日平均回数の,ベースラインから 4 週までの変化量と 12 週までの変化量とした.
316 例がエリンザネタント群,158 例がプラセボ–エリンザネタント群に割り付けられた.ベースライン時の中等度~重度の血管運動神経症状の 1 日平均回数は,エリンザネタント群で 11.4 回(95%信頼区間 [CI] 10.7~12.2),プラセボ–エリンザネタント群で 11.5 回(95% CI 10.5~12.5)であった.4 週の時点で,中等度~重度の血管運動神経症状の 1 日平均回数のベースラインからの平均変化量は,エリンザネタント投与を受けた参加者で -6.5 回(95% CI -7.2~-5.8),プラセボ投与を受けた参加者で -3.0 回(95% CI -3.9~-2.2)であった(最小二乗平均差 -3.5 回,95% CI -4.4~-2.6,P<0.001).12 週の時点での平均変化量は,エリンザネタント投与を受けた参加者で -7.8 回(95% CI -8.5~-7.1),プラセボ投与を受けた参加者で -4.2 回(95% CI -5.2~-3.2)であった(最小二乗平均差 -3.4 回,95% CI -4.2~-2.5,P<0.001).1 週~12 週のエリンザネタント投与を受けた参加者のうち 220 例(69.8%)と,プラセボ投与を受けた参加者のうち 98 例(62.0%)が,投与中の有害事象を 1 件以上報告し,とくに頻度が高かったのは頭痛,倦怠感,傾眠であった.1 週~12 週における重篤な有害事象は,エリンザネタント投与を受けた参加者のうち 8 例(2.5%)と,プラセボ投与を受けた参加者のうち 1 例(0.6%)に発現した.
内分泌療法に伴う血管運動神経症状の回数は,エリンザネタントを投与した場合,プラセボを投与した場合と比較して有意に減少した.(バイエル社から研究助成を受けた.OASIS-4 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT05587296)