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September 4, 2025 Vol. 393 No. 9

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1 型糖尿病に対する幹細胞由来の完全分化型膵島細胞療法
Stem Cell–Derived, Fully Differentiated Islets for Type 1 Diabetes

T.W. Reichman and Others

背景

ジミスレセル(zimislecel)は,同種幹細胞由来の膵島細胞療法である.1 型糖尿病患者における,ジミスレセルの安全性と有効性に関するデータが必要である.

方 法

1 型糖尿病患者を対象に,ジミスレセルの第 1・2 相試験を行った.パート A では,参加者にジミスレセルの半量(0.4×109 個)を門脈内に単回注入し,2 年以内に 2 回目の半量投与を選択できることとした.パート B・C では,参加者にジミスレセルの全量(0.8×109 個)を単回注入した.全例に,グルココルチコイドを含まない免疫抑制療法も行った.パート A の主要評価項目は安全性とした.パート C の主要評価項目は,90~365 日目に重症低血糖イベントが発生しないこと,かつ 180~365 日目の 1 時点以上で糖化ヘモグロビン値が 7%未満であるかベースラインから 1 パーセントポイント以上低下していることとした.パート C の副次的評価項目は,安全性,180~365 日目におけるインスリン療法からの離脱などとした.パート C における主要評価項目と副次的評価項目の評価は,パート B・C でジミスレセルの全量を単回注入した参加者を対象とした.4 時間混合食負荷試験中の血清 C-ペプチド測定により,生着と膵島機能を評価した.解析はすべて中間解析であり,事前に規定していなかった.

結 果

計 14 例(パート A 2 例,パート B・C 12 例)が 12 ヵ月間以上の追跡調査を完了し,解析対象となった.14 例全例で,C-ペプチドはベースライン時に検出されなかった.ジミスレセル注入後,C-ペプチドが検出されたことを証拠として,参加者全例で生着と,膵島機能が認められた.もっとも頻度の高かった重篤な有害事象は好中球減少症で,3 例に発現した.2 例が死亡し,1 例はクリプトコッカス髄膜炎,もう 1 例は既存の神経認知障害の進行による興奮を伴う重度認知症が原因であった.パート B・C の 12 例全例で,重症低血糖イベントは発生せず,糖化ヘモグロビン値 7%未満が達成された.これらの参加者では,血糖値が目標範囲(70~180 mg/dL)にあった時間の割合が 70%を超えていた.365 日目に,12 例中 10 例(83%)がインスリン療法から離脱し,外因性インスリンを使用していなかった.

結 論

1 型糖尿病患者を対象としたこの小規模短期試験の結果は,ジミスレセルにより生理的膵島機能が回復するという仮説を支持しており,さらなる臨床研究が必要である.(バーテックス ファーマシューティカルズ社から研究助成を受けた.VX-880-101 FORWARD 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04786262)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2025; 393 : 858 - 68. )