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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

February 21, 2002
Vol. 346 No. 8

  • 心停止後の軽度低体温療法
    Mild Therapeutic Hypothermia after Cardiac Arrest

    心停止後の軽度低体温療法

    大脳損傷とそれに伴う認知障害は,心停止の持続後によくみられる.この研究では,心室細動による心停止後に蘇生した患者を対象に,軽度低体温療法と正常体温療法とを比較した.良好な神経学的転帰は,低体温治療群のほうが有意に高頻度であった.
    これらの結果は,今週号の別の研究結果と合わせて,軽度低体温療法が心停止後に蘇生した患者に相当の効果を与える可能性があり,この方法がただちにこのような患者の治療に考慮されるべきであることを示唆している.

  • 心停止の昏睡状態の生存者の治療における低体温
    Hypothermia in the Treatment of Comatose Survivors of Cardiac Arrest

    院外での心停止から蘇生後も意識消失したままである患者は,予後が不良である.この試験では,患者 77 例が中等度の低体温導入,あるいは正常体温による治療に割付けられた.神経学的に良好な回復を示し,生存して退院した患者は,正常体温群より低体温群で高頻度であった.
    この研究は患者の数が少数にすぎず,また他の重要な限界があるために,研究自体は予備的なものと考えられるであろう.しかし,本誌今週号に報告されている「心停止後の低体温研究」と合わせて考えると,中等度の低体温は,他の方法ではよくない状況となる転帰を改善する可能性のあることが示唆される.

  • 意義不明単クローン性高ガンマグロブリン血症の予後
    Prognosis in Monoclonal Gammopathy of Undetermined Significance

    意義不明単クローン性高ガンマグロブリン血症の予後

    意義不明単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)は,多発性骨髄腫や関連疾患である証拠がなく,血清中単クローン性蛋白質が 3 g / dL 以下の場合に診断される.この疾患は 50 歳以上の人にはまれではなく,数年のあいだに本格的な多発性骨髄腫に進行することもある.この研究では,1,400 例近い患者を最長 35 年間経過観察し,多発性骨髄腫に進行するリスクおよび進行の重要な予測因子を明らかにしている.
    MGUS が,少量の単クローン性免疫グロブリンを産生する B 細胞クローンの無害な増殖であるのか,多発性骨髄腫,アミロイドーシス,B 細胞リンパ腫の不吉な前駆症状であるのかはわからない.この多数の MGUS 患者を対象とした包括的な研究は,多発性骨髄腫および関連疾患に進行するリスクおよび予後因子に関する臨床上重要な情報を提供している.

  • リポジストロフィー治療におけるレプチン補充
    Leptin Replacement in the Treatment of Lipodystrophy

    リポジストロフィー治療におけるレプチン補充

    重度のリポジストロフィー患者は,脂肪細胞ホルモンであるレプチンが顕著に欠乏している.この試験では,顕著なリポジストロフィー,高トリグリセリド血症,肝臓脂肪症および糖尿病(8 例)の女性患者 9 例に,組換え型メチオニルヒトレプチンの用量を漸増して 4 ヵ月間投与した.レプチン補充療法により,血糖コントロールが向上し,トリグリセリド濃度が低下し,1 日のカロリー摂取量および安静時代謝率も低下した.
    レプチン欠乏は,重度のリポジストロフィーの特徴であるインスリン抵抗性およびその他の代謝異常の主因かもしれない.

  • 医学の進歩:腎移植後の長期転帰を改善する
    Medical Progress: Improving Long-Term Outcomes after Renal Transplantation

    医学の進歩:腎移植後の長期転帰を改善する

    この論文は,早期および遅発腎同種移植片廃絶を予防し,患者の長期転帰を改善する方法に関する包括的な最新の総説である.著者らは遅発移植片廃絶の問題にとくに留意し,シクロスポリンやタクロリムスなどのカルシニューリン阻害剤,インターロイキン- 2 シグナル伝達阻害剤であるシロリムス(sirolimus),および T 細胞と B 細胞の増殖を阻害するプリン合成阻害剤であるミコフェノール酸モフェチルを含めた,最新の拒絶反応抑制療法について述べている.

  • 肥満の薬物療法
    Drug Therapy for Obesity

    米国でもっとも一般的な栄養障害は,過体重と肥満である.この総説は,行動療法,運動,食事の改善,そして場合によっては投薬を行う複合的なアプローチを必要とする慢性疾患としての,過体重と肥満の治療法について論じている.著者らは 3 種類の体重減少薬を検討している:食欲を抑制する薬剤,栄養吸収を減少させる薬剤,エネルギー消費を増加させる薬剤である.現在入手可能な薬剤および近日発売される薬剤に関して議論している.
    体重減少薬は,肥満のためかなりの医学的リスクがあるが,薬物療法以外の治療法が成功しなかった患者に対する補助的療法として使用するのが最善である.

  • Clinical Implications of Basic Research:クローン病の新しい治療ターゲット
    Clinical Implications of Basic Research: New Therapeutic Targets in Crohn's Disease

    Clinical Implications of Basic Research:クローン病の新しい治療ターゲット

    NOD2 はクローン病に対する感受性を賦与する遺伝子で,第 16 染色体上に同定されている.遺伝子の先端を欠失した変異のホモ接合は,クローン病のリスクを 20~40 倍増加させる.潰瘍性大腸炎患者ではそのような変異は見付かっていない.NOD2 はアポトーシスおよび微生物内毒素の認識において役割をもつ.
    クローン病における NOD2 切断変異の発見は,重要な進歩である.この発見は家族性および散発性症例のスクリーニングに新しい可能性を広げ,治療の手段を示している.

  • Sounding Board:血液と災害
    Sounding Board: Blood and Disaster

    2001 年 9 月 11 日,ニューヨーク市とワシントン DC を襲った同時多発テロのほぼ直後,連邦政府と米国赤十字社は献血を呼びかけた.全米から 100 万人以上の前向きなドナーが呼びかけに応じ,約 50 万ユニットの血液が犠牲者のために集められた.しかし,使用されたのは 258 ユニットにすぎず,採取ユニットの多くは使用不能であった.
    災害後,献血に対する大衆向けの呼びかけは不要かもしれない.都市部のほぼすべての医療センターにある血液バンクには,緊急事態から少なくとも最初の 3 日分の血液は十分確保されており,血液の供給は近隣都市の貯蔵血液で迅速に補える.災害対策計画には血液供給の調整手段を盛り込むべきである.