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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

July 25, 2002
Vol. 347 No. 4

  • 早期発症 B 群連鎖球菌疾患の予防
    Prevention of Early-Onset Group B Streptococcal Disease

    早期発症 B 群連鎖球菌疾患の予防

    新生児における早期発症 B 群連鎖球菌性疾患の発生率を減少させるための現在の米国のガイドラインは,分娩時抗菌薬予防投与の対象候補を同定するために,妊娠女性の感染をスクリーニングするか臨床的危険因子の確認を推奨している.この多施設共同後ろ向き研究では,妊娠中に B 群連鎖球菌培養検査が実施された母親から産まれた乳児(スクリーニング群)とスクリーニングに関する記録のない女性から産まれた乳児(「リスクに基づく」と推定される群)における早期発症 B 群連鎖球菌疾患の発生率を比較した.スクリーニング群での早期発症疾患のリスクは,リスクに基づく群の半分であった.臨床的危険因子があり予防投与を受けるべきであるのに受けなかった女性を除外しても,依然としてリスクがより低かったことから,明確な計画をもたない医療提供者にかかった女性をリスクに基づく群で誤って分類した可能性があることでは,観察された結果を説明できなかった.
    分娩時抗菌薬予防投与の対象候補を同定するためには,臨床的危険因子を用いるよりも,B 群連鎖球菌の保菌状態を出生前に全体的にスクリーニングするほうが,早期発症 B 群連鎖球菌性疾患の発生率減少により効果的のようである.これらの知見は,両アプローチを是認する現在の勧告を再考する必要があることを示唆している.

  • 超低出生体重児の早発性敗血症を引き起す病原体
    Pathogens Causing Early-Onset Sepsis in Very-Low-Birth-Weight Infants

    超低出生体重児の早発性敗血症を引き起す病原体

    この研究では,新生児 B 群連鎖球菌感染を減少させるための分娩時における抗菌薬の使用が増加したことが,超低出生体重児における早発性敗血症の発症率および原因の変化に関連しているかどうかを評価するため,著者らは,1998~2000 年のあいだに生まれた体重 401~1,500 g の新生児と 1991~93 年のあいだに生まれた超低出生体重児の出生コホートとで,早発性敗血症(生後 72 時間以内に発症)の発症率を比較した.1991~93 年のコホートと比較すると,1998~2000 年のコホートでは B 群連鎖球菌性敗血症が顕著に減少したが,大腸菌性敗血症は増加した.早発性敗血症の全発症率は有意に変化しなかった.早発性敗血症に感染した新生児は,感染していない新生児に比べて死亡率が高かった.
    早発性敗血症の原因に関する,グラム陽性菌主体からグラム陰性菌主体への経時的変化は,確認が必要である.しかしこの知見は,分娩および出産中の抗菌薬の広範な使用が有害作用を有する可能性についての懸念を喚起している.

  • 心拍のないドナーからの腎移植
    Kidney Transplantation from Donors without a Heartbeat

    心拍のないドナーからの腎移植

    腎同種移植片の不足は,生体ドナーや心拍のある死体ドナー以外の臓器源への関心を掻き立ててきた.蓄積データでは,心拍のないドナーからの死体腎の短期生着率は,心拍のあるドナーからの腎臓の短期生着率と同等であることが示唆されている.この報告では,心拍のないドナーから腎移植を受けた患者 122 例と,これらの患者とマッチさせた心拍のあるドナーから腎移植を受けた患者 122 例を対象に行った単一施設研究について述べている.レシピエントは最長 15 年間追跡された.心拍のないドナーから腎臓を提供された患者において,移植腎機能の初期遅延の頻度は有意に高かったが,移植片の長期生着率は 2 群で同程度であった.
    心拍のない死体ドナーからの腎同種移植片は,安全にかつ容認できる転帰をもって移植できるかもしれない.

  • 髄膜脊髄瘤に対する子宮内手術後の類皮封入嚢腫と早期脊髄係留
    Dermoid Inclusion Cysts and Early Spinal Cord Tethering after in Utero Surgery for Myelomeningocele

    髄膜脊髄瘤に対する子宮内手術後の類皮封入嚢腫と早期脊髄係留

    髄膜脊髄瘤に対する子宮内手術は,脊髄が羊水に曝露することで生じる可能性がある神経学的機能障害を軽減すると考えられており,現在まで約 220 件の手術が行われてきている.著者らは,妊娠 22~24 週での髄膜脊髄瘤の子宮内修復後に下肢の運動機能あるいは膀胱機能を喪失した 1 歳未満の女児 3 例について報告している.3 例とも類皮嚢腫とそれに関連する髄膜係留を有し,手術を要した.
    髄膜脊髄瘤に対する子宮内手術には,神経学的転帰の向上が期待できるが,早期脊髄係留や類皮嚢腫形成を示したこれらの症例は,警告通知のように思われる.出生後に髄膜脊髄瘤の閉鎖を行った小児と,子宮内で髄膜脊髄瘤の閉鎖を行った小児を比較する長期評価が必要である.

  • 医学の進歩:リウマチ性多発筋痛症と巨細胞性動脈炎
    Medical Progress: Polymyalgia Rheumatica and Giant-Cell Arteritis

    医学の進歩:リウマチ性多発筋痛症と巨細胞性動脈炎

    リウマチ性多発筋痛症は炎症性疾患であり,主として頸部,上肢帯,および下肢帯のこわばりとなって現われる.巨細胞性(または側頭)動脈炎は,大動脈弓から派生する頭への動脈分枝に炎症を起す.これらの 2 つの状態は関連していると考えられており,同時に発症することもある.巨細胞性動脈炎は重篤な疾患であり,視神経や網膜の虚血の結果として失明を起すこともある.どちらの疾患もコルチコステロイド療法に反応する.この包括的な総説では,これらの疾患の臨床症状,病態生理学,および治療について概説する.

  • Sounding Board:HIV 感染患者における固形臓器移植
    Sounding Board: Solid-Organ Transplantation in HIV-Infected Patients

    無症候性の HIV 陽性患者に対する移植の転帰が他の移植レシピエントに比べて不良であることを示すデータはないが,多くの施設は,これらの患者を固形臓器移植の候補者と考えていない.今回の "Sounding Board" では,HIV 感染患者に対する移植を他の慢性疾患患者に対する移植と同様とみなすことを支持する倫理的議論について概説する.