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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

January 2, 2003
Vol. 348 No. 1

ORIGINAL ARTICLE

  • 高リスク手術患者に対する肺動脈カテーテルの使用
    Use of Pulmonary-Artery Catheters in High-Risk Surgical Patients

    高リスク手術患者に対する肺動脈カテーテルの使用

    この大規模試験では,高齢の高リスク患者を,肺動脈カテーテルによる目標指向療法あるいは肺動脈カテーテルを使用しない標準治療に,術前に無作為に割付けた.両群のあいだで,院内での死亡率あるいは 6,12 ヵ月の時点での死亡率に有意差はなかった.肺塞栓症の頻度は,カテーテル群においてより高かった.
    これらの知見は,高齢の高リスク患者の治療に対し,術中・術後に肺動脈カテーテルを日常的に使用することに反論するものである.

  • 多発性硬化症に対する Natalizumab
    Natalizumab for Multiple Sclerosis

    natalizumab は,活性化したリンパ球や単球の表面に発現する非常に遅発性の接着抗原,α4 インテグリンの拮抗薬である.この二重盲検プラセボ比較対照試験では,natalizumab 投与を受けた患者は,ガドリニウム造影磁気共鳴画像法による新たな造影病変がより少なく,再発も有意に少なかった.
    慎重に行われたこの対照試験は,再発性多発性硬化症患者を対象にした.追跡期間は 6 ヵ月であるためより長期の研究が必要であるが,結果は,活性化した免疫細胞の接着と血管内皮細胞経由の移動を阻害する薬物による療法が,臨床上の利益を与える可能性があることを示唆している.

  • 活動性クローン病に対する Natalizumab
    Natalizumab for Active Crohn's Disease

    活動性クローン病患者におけるこの 12 週間の無作為プラセボ比較対照試験では,α4 インテグリン特異的ヒトモノクローナル抗体である natalizumab は,6 週での有意に高い臨床寛解率(事前に定義した主要転帰指標)に結び付かなかった.しかし,副次転帰指標の解析では,natalizumab が疾患の活動を減少させ,QOL を向上させることが示唆されている.
    この試験では,α4 インテグリンがクローン病において重要であることを示唆している.クローン病に対し,他の利用可能な治療法と比較した natalizumab の重要性は,いまだ不明である.

  • ハレルフォルデン - スパッツ症候群
    Hallervorden-Spatz Syndrome

    ハレルフォルデン‐スパッツ症候群は,常染色体劣性疾患であり,失調,パーキンソニズム,および脳における鉄の沈着が特徴である.著者らは,典型的な疾患(早期に発症し,進行が早いのが特徴)の全患者と非定型疾患(発症が遅く,進行が遅いのが特徴)の患者の 1/3 がパントテン酸キナーゼ 2(PANK2)をコードする遺伝子に突然変異をもつことを明らかにした.PANK2 遺伝子に突然変異がある患者は,すべて,脳の磁気共鳴画像で特徴的な異常を示した.
    現在,ハレルフォルデン‐スパッツ症候群として臨床的に分類されている多くの患者は,PANK2 突然変異に関連する神経変性を有するとみなすことができる.

CLINICAL PRACTICE

  • 高齢者の転倒予防
    Preventing Falls in Elderly Persons

    うっ血性心不全,関節炎,抑うつ,睡眠困難の既往がある 79 歳の女性が経過観察のため受診している.患者は,抗うつ薬,利尿薬,アンジオテンシン変換酵素阻害薬,β遮断薬を含むさまざまな処方薬および市販の睡眠薬とアレルギー薬を服用している.慢性症状は安定しているようである.患者の娘は,患者が過去 6 ヵ月間に 2 回転倒したことを報告している.今後の転倒を防ぐには,何をすべきであろうか?

GENOMIC MEDICINE

  • 集団スクリーニング
    Population Screening

    現在,新生児では多数の遺伝性疾患の有無を日常的にスクリーニングしている.こうした場合,早期診断により,回復不能な有害な結果になる前に治療を行うことが可能になる.しかし,今回この「ゲノム医学」シリーズで概説されているように,臨床上の利益は成人のスクリーニングでも得られる――嚢胞性線維症やテイ‐サックス病のような古典的な遺伝性疾患に関連した遺伝子に対してだけではなく,第 V 因子ライデンや遺伝性ヘモクロマトーシスに関連する突然変異といった,複合疾患の危険因子と考えられる遺伝子に対しても同様である.

CLINICAL PROBLEM-SOLVING

  • みるのは簡単であるが,発見はむずかしい
    Easy to See but Hard to Find

    フィリピン出身の 46 歳の女性は,疲労,体の痛み,体重減少を報告している.診察では,彼女は青ざめており,広範囲に骨の圧痛がある.ヘモグロビン濃度は 8.0 g/dL,白血球数および血小板数は正常である.血清クレアチニン濃度は,2.8 mg/dL(247.5 μmol/L),血清カルシウム濃度は 13.2 mg/dL(3.3 mmol/L)である.