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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

February 5, 2004
Vol. 350 No. 6

ORIGINAL ARTICLE

  • マイノリティ・グループにおける HLA 適合と腎移植
    HLA Matching and Kidney Transplantation in Minority Groups

    マイノリティ・グループにおける HLA 適合と腎移植

    米国では,移植待機リストに載っている非白人に比べ,相対的に多くの白人が腎移植を受ける.この研究では,現行の割当て方法,優先事項から HLA-B 適合を除いた基準,優先事項から HLA-B,DR 適合を除いた基準を用いて,さまざまな人種・民族間における移植頻度を比較した.優先事項から HLA-B 適合を除くと,移植腎喪失の発生率はわずかに増加したが,移植を受ける非白人数が増加することで,現在みられる人種間不均衡が是正された.
    現行の割当て基準を変更することで,腎移植における人種・民族間の均衡を図ることができるであろう.

  • 発作性夜間血色素尿症の患者におけるエクリズマブ
    Eculizumab in Patients with Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria

    発作性夜間血色素尿症(PNH)における溶血性貧血の原因は,補体系の膜侵襲複合体の溶血作用に対し,赤血球が過剰に感受性を示すことにある.C5 の開裂がこの複合体の集合を誘発する.ヒト化抗体エクリズマブは,C5 の開裂を阻害し,PNH 患者における溶血性貧血の徴候を緩和し,輸血の必要性を減少させる.
    この非盲検試験は,エクリズマブが PNH に対する安全で有効な治療法であることを示している.しかしエクリズマブの長期効果は不明であるため,PNH を治療する医師は慎重でなければならない.

  • 嚢胞性線維症と脂肪酸代謝の 関連性
    Association of Cystic Fibrosis with Fatty Acid Metabolism

    嚢胞性線維症患者では血漿脂肪酸濃度に変化がみられるが,この異常が炎症を反映しているのか,あるいは原発性の脂肪酸代謝障害を反映しているのかどうかは不明である.この研究者らは,嚢胞性線維症患者,健常対照者,炎症性腸疾患患者,喘息患者を対象に脂肪酸の濃度を分析した.アラキドン酸のドコサヘキサエン酸に対する比率は,健常対照者と比較して,嚢胞性線維症患者で上昇していた.
    嚢胞性線維症膜通過伝導制御因子(CTFR)遺伝子の異常は,組織および血漿の脂肪酸プロファイルの異常と関連していた.

BRIEF REPORT

  • IGFALS 変異によって起る IGF 欠損症
    IGF Deficiency Caused by an IGFALS Mutation

    インスリン様成長因子 1(IGF-1)は,主に,リガンド,IGF 結合蛋白 3,そして複合体を安定させる酸不安定性サブユニットを含む 150 kD の三元複合体として血液中を循環している.この論文は,思春期の開始と発達は遅延しているが,身長の発育の遅れはわずかな 17 歳の少年について述べている.この少年は,IGF の酸不安定性サブユニット(IGFALS)遺伝子の不活性化突然変異を有することが判明した.
    この変異は,血中 IGF-1 濃度を著しく低下させ,思春期を遅延させる可能性があると考えられる.

MECHANISMS OF DISEASE

  • パルボウイルス B19
    Parvovirus B19

    パルボウイルス B19

    パルボウイルス B19 は小児の伝染性紅斑(第五病)の原因であり,成人では一過性の関節症を引き起す可能性がある.また,このウイルスは,鎌状赤血球症や他の慢性溶血性貧血の患者で一過性の骨髄無形成クリーゼをきたすことがあり,赤芽球癆の原因となることもある.この論文は,ウイルスの特性,ウイルスに対する宿主の反応,感染の予防法・治療法について概説している.

CURRENT CONCEPTS

  • バッド・キアリ症候群
    The Budd-Chiari Syndrome

    肝静脈流出路閉塞は,肝臓の細静脈,太い肝静脈,下大静脈,右心房のレベルで発現する.流出路閉塞は,肝臓の洞様毛細血管圧の上昇と門脈圧亢進を引き起す.この論文は,バッド・キアリ症候群の原因と,抗凝固療法,血栓溶解療法,経頸静脈的肝内短絡術,門脈静脈短絡術,肝移植などを用いた現在の管理法について簡潔に述べている.

CLINICAL PROBLEM-SOLVING

  • オッカムの剃刀とセイントの三徴
    Occam's Razor versus Saint's Triad

    血清反応陰性の関節リウマチの既往がある 60 歳の女性が救急診療部を受診した.労作時呼吸困難の悪化,乾性咳,発熱が 10 日間,右脚部および臀部の疼痛が 7 日間続いていた.
    監訳者註:「オッカムの剃刀」とは,同じことを同じくらいうまく説明する仮説があるなら,より簡単なほうを選ぶべきであるという考え方.

CLINICAL IMPLICATIONS OF BASIC RESEARCH

  • 移植片対宿主病リスクを低減する
    Reducing the Risk of Graft-versus-Host Disease

    最近の研究で,リンパ腫のマウスモデルにおいて,造血幹細胞の移植材料に制御性 T 細胞の粗分画を含めると,移植片対宿主病のリスクが低減することが明らかになった.