グルタミン酸脱水素酵素遺伝子の制御的変異を示す幼児における高インスリン症と高アンモニア血症
HYPERINSULINISM AND HYPERAMMONEMIA IN INFANTS WITH REGULATORY MUTATIONS OF THE GLUTAMATE DEHYDROGENASE GENE
C.A. STANLEY AND OTHERS
低血糖症と高アンモニア血症を特徴とする新しいタイプの先天性高インスリン症が最近記述された.われわれは,この高インスリン症と高アンモニア血症の症候群が,グルタミン酸塩をα-ケトグルタール酸塩に酸化し,膵β細胞におけるインスリン分泌と肝臓における尿素産生の制御因子の可能性がある,グルタミン酸脱水素酵素の過剰活性によって生じるという仮説を立てた.
われわれは,非血縁の高インスリン症–高アンモニア血症症候群の子供 8 人からのリンパ芽球のグルタミン酸脱水素酵素活性を測定した:6 人が散発的症例で,2 人は家族性症例であった.リンパ芽球メッセンジャー RNA から調製したグルタミン酸脱水素酵素相補的 DNA の配列決定によって,グルタミン酸脱水素酵素遺伝子の変異を確認した.部位指向性変異誘発を用いて COS-7 細胞における変異を発現した.
グアノシン 5'-三リン酸による阻害に対するグルタミン酸脱水素酵素の感度は,散発性の高インスリン症–高アンモニア血症症候群の患者では正常レベルの 4 分の 1,そして家族性症例患者とその罹患血縁者では正常レベルの半分で,この所見は酵素の過剰活性と一致した.酵素の感受性の低下の差は,2 群における低血糖症の重症度の差と相関した.子供 8 人全員が野生型対立遺伝子とヘテロ接合で,酵素のアロステリックドメインと推定される部位に変異を示した.散発症例患者 6 人に四つの異なる変異を確認した;家族性症例の患者 2 人では 5 番目の変異が同じであった.1 人の患者からの変異配列をトランスフェクトさせた COS-7 細胞の二つのクローンでは,グアノシン 5'-三リン酸に対する酵素の感受性が低下しており,この所見は子供のリンパ芽球での所見と類似していた.
高インスリン症–高アンモニア血症症候群は,酵素活性の制御を障害するグルタミン酸脱水素酵素遺伝子の変異によって生じる.