睡眠時低血糖症に対するエピネフリン反応の低下
DECREASED EPINEPHRINE RESPONSES TO HYPOGLYCEMIA DURING SLEEP
T.W. JONES AND OTHERS
1 型糖尿病患者では,低血糖症は一般に睡眠中に起り,しばしば無症候性である.これにより,睡眠が低血糖症に対する抗制御ホルモン反応の低下に関連するか否かという疑問が生じた.
思春期の1 型糖尿病患者 8 人と年齢をマッチさせた正常被験者 6 人において,昼間の覚醒時,夜間睡眠時,そして夜間覚醒時のインスリン誘発低血糖症に対する抗制御ホルモン反応を調べた.各試験において,グルコース血漿濃度を約 100 mg/dL(5.6 mmol/L)で 60 分安定させ,次に 50 mg/dL(2.8 mmol/L)に減少し,その濃度で 40 分維持した.遊離のインスリン,エピネフリン,ノルエピネフリン,コルチゾール,および成長ホルモンの各血漿濃度を,各試験のあいだ頻繁に測定した.睡眠はポリソムノグラフィーによってモニターした.
グルコースおよび遊離インスリンの血漿濃度は,すべての試験のあいだ,両群について同程度であった.被験者が睡眠中の試験では,低血糖相のあいだに目覚めた人はなかったが,被験者が覚醒中の試験の最後の 30 分では,糖尿病患者と正常被験者はともに,低血糖症の症状を示した.糖尿病患者では,低血糖症に対する血漿エピネフリン反応は,彼らが睡眠中の場合(平均 [±SE] 最高エピネフリン血漿濃度,70 ± 14 pg/mL [382±76 pmol/L;ベースラインとの比較に関して p = 0.3])には,昼間または夜間の覚醒時の場合(238±39 pg/mL [1,299±213 pmol/L],ベースラインと比較して p = 0.004,そして 296±60 pg/mL [1,616±327 pmol/L],それぞれ p = 0.004)と比較して鈍麻していた.患者の血漿ノルエピネフリン反応もまた,睡眠時は低下するが,彼らのコルチゾール血漿濃度は増加せず,成長ホルモン血漿濃度はわずかに増加した.正常被験者における抗制御ホルモン反応のパターンも同様であった.
睡眠は,糖尿病患者と正常被験者において,低血糖症に対する抗制御ホルモン反応を障害する.