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February 5, 1998 Vol. 338 No. 6

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急性呼吸窮迫症候群の高リスク患者における気圧性外傷を予防する換気戦略の評価
EVALUATION OF A VENTILATION STRATEGY TO PREVENT BAROTRAUMA IN PATIENTS AT HIGH RISK FOR ACUTE RESPIRATORY DISTRESS SYNDROME

T.E. STEWART AND OTHERS

背景

高炭酸ガス血症を容認しつつ,気道圧と 1 回換気量を制限する機械的人工換気戦略は,急性呼吸窮迫症候群の患者に推奨されている.目標は,過剰膨満による肺損傷を減少させることである.しかし,このアプローチの有効性は確立されていない.

方 法

挿管後 24 時間以内に,急性呼吸窮迫症候群の高リスク患者を無作為割付けして,最大吸気圧を 30 cmH2O 以下および 1 回換気量を 8 mL/kg 体重以下に維持しながら,制限換気圧および制限換気量(制限換気群)に,または最大吸気圧を 50 cmH2O まで上昇させ,1 回換気量を 10~15 mL/kg にする従来の換気(対照群)のいずれかを行った.その他の換気変数はすべて 2 群で同様であった.

結 果

同様の臨床特徴を有する患者 120 人を無作為化した(各群 60 人).制限換気群および対照群の患者を,異なる平均(±SD)1 回換気量(それぞれ,7.2±0.8 対 10.8±1.0 mL/kg 体重;p<0.001)と,最大吸気圧(23.6±5.8 対 34.0±11.0 cmH2O,p<0.001)に曝露させた.死亡率は制限換気群で 50%,対照群で 47%であった(相対リスク,1.07;95%信頼区間,0.72~1.57;p=0.72).制限換気群では,対照群と比較して,許容される高炭酸ガス血症(permissive hypercapnia:動脈血二酸化炭素分圧,>50 mmHg)の頻度が高く(52% 対 28%,p=0.009),より顕著で(54.4±18.8 対 45.7±9.8 mmHg,p=0.002),より持続した(146±265 対 25±22 時間,p=0.017).気圧性外傷の発生率,最高多臓器機能障害スコア,臓器不全発症数は,2 群で同程度であった;しかし,筋弛緩薬を必要とした患者数は制限換気群のほうが対照群よりも多く(23 人 対 13 人,p=0.05),腎不全で透析を必要とした患者数も多かった(13 人 対 5 人,p=0.04).

結 論

急性呼吸窮迫症候群の高リスク患者では,最大吸気圧および 1 回換気量を制限する機械的人工換気戦略は,死亡率を低下させないように思われ,罹患率を増加させる可能性がある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1998; 338 : 355 - 61. )