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December 17, 1998 Vol. 339 No. 25

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重症の心不全患者におけるベスナリノンによる死亡率の用量依存的な上昇
A DOSE-DEPENDENT INCREASE IN MORTALITY WITH VESNARINONE AMONG PATIENTS WITH SEVERE HEART FAILURE

J.N. COHN AND OTHERS

背景

変力性作用薬のベスナリノンは,短期のプラセボ対照試験において,1 日 60 mg の投与で重症の心不全患者の生存を著しく改善することが示されているが,1 日用量が 120 mg になると,生存に有害な影響を及ぼすようになる傾向があった.われわれは,長期試験において,1 日用量を 60 mg あるいは 30 mg にした時のベスナリノンの死亡率と罹患率に対する影響をプラセボとの比較において評価した.

方 法

最適な治療が行われているにもかかわらず,ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association:NYHA)の心機能分類の III 度または IV 度の心不全の症状があり,左心室の駆出率が 30%以下の 3,833 人の患者が試験に組み入れられた.平均の追跡調査期間は 286 日であった.

結 果

ベスナリノンの 60 mg 群(死亡例は 292 例で,22.9%)よりもプラセボ群(死亡例は 242 例で,18.9%)で,死亡例が有意に少なく,生存期間も長かった(p=0.02).ベスナリノンによる死亡率の上昇は,不整脈が原因と考えられた突然死の増加によるものであった.QOL は,無作為割付け後の 8 週目(p<0.001)および 16 週目(p=0.003)において,プラセボ群よりもベスナリノンの 60 mg 群で有意に改善した.ベスナリノンの 30 mg 群で認められた死亡率と QOL の評価における傾向は,60 mg 群で認められた傾向と同様のものであったが,プラセボ群の傾向とも有意な差はなかった.顆粒球の減少が,ベスナリノンを 1 日 60 mg 投与された患者の 1.2%,ベスナリノンを 30 mg 投与された患者の 0.2%に発現した.

結 論

ベスナリノンは,重症の心不全患者の死亡率の上昇に用量依存的に関連しており,この死亡率の上昇はおそらく不整脈による死亡の増加と関係があると考えられる.QOL に短期的な有益性が認められたことによって,心不全の治療における適切な治療目標についての問題が起っている.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1998; 339 : 1810 - 6. )