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August 20, 1998 Vol. 339 No. 8

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心筋梗塞後の高リスクおよび低リスク患者の死亡率に及ぼすβ遮断の効果
EFFECT OF BETA-BLOCKADE ON MORTALITY AMONG HIGH-RISK AND LOW-RISK PATIENTS AFTER MYOCARDIAL INFARCTION

S.S. GOTTLIEB, R.J. MCCARTER, AND R.A. VOGEL

背景

心筋梗塞後の患者にアドレナリン作動性β遮断薬を長期間投与することで,生存率が改善する.しかし医師は,高齢者や,慢性肺疾患患者,左室不全患者,非 Q 波心筋梗塞患者など,多くの患者にβ遮断薬を投与したがらない.

方 法

医療財政管理庁(Health Care Financing Administration)が支援する共同心血管プロジェクトにより,心筋梗塞患者 201,752 人のカルテを抽出した.生存率に影響を及ぼす可能性がある多数の要因を説明する Cox 比例ハザードモデルを用いて,心筋梗塞後 2 年間β遮断薬による治療が行われた患者の死亡率を,β遮断薬による治療は行われなかった患者の死亡率と比較した.

結 果

全体で患者の 34%がβ遮断薬を投与された.その割合は,かなりの高齢者,黒人,駆出率が最低分位の患者,心不全患者,慢性閉塞性肺疾患患者,血清クレアチニン高値の患者,1 型糖尿病患者ではより低かった.それにもかかわらず,β遮断薬で治療されたすべてのサブグループの患者は,β遮断薬で治療されなかった患者よりも死亡率が低かった.心筋梗塞を起したがほかに合併症のない患者では,β遮断薬による治療で死亡率が 40%低下した.非 Q 波心筋梗塞患者,慢性閉塞性肺疾患患者においても,死亡率は 40%低下した.黒人,80 歳以上の高齢者,左室駆出率 20%未満の患者,血清クレアチニン濃度 1.4 mg/dL(124 μmol/L)超の患者,糖尿病患者では,死亡率の低下割合はより低かった.しかし,これらのサブグループでは死亡率がより高いことを考慮すれば,その死亡率の絶対値の低下は,特定の危険因子を有しない患者の死亡率と同程度またはそれ以上であった.

結 論

心筋梗塞後,β遮断薬は禁忌とみなされることの多い状態(心不全,肺疾患,高齢)の患者や,非貫壁性心筋梗塞患者でも,β遮断薬療法により利益が得られる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1998; 339 : 489 - 97. )