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September 24, 1998 Vol. 339 No. 13

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ナーシングホーム入居者における抗うつ薬と転倒のリスク
ANTIDEPRESSANTS AND THE RISK OF FALLS AMONG NURSING HOME RESIDENTS

P.B. THAPA, P. GIDEON, T.W. COST, A.B. MILAM, AND W.A. RAY

背景

ナーシングホーム(私設療養院)の入居者では,三環系および複素環系抗うつ薬の使用は,転倒リスクが高いことと関連している.新しい抗うつ薬である選択的セロトニン再吸収阻害薬(SSRI)は,転倒を引き起こすと考えられる三環系抗うつ薬の副作用がほとんどないため,転倒のリスクが高い入居者にとってより安全であるという仮説が立てられている.

方 法

開始時コホートとして,テネシー州のナーシングホームの入居者から,三環系抗うつ薬の新規使用者 665 例,選択的セロトニン再吸収阻害薬の新規使用者 612 例,トラゾドンの新規使用者 304 例,抗うつ薬非使用者 847 例の,計 2,428 例を後ろ向きに同定した.抗うつ薬の使用者については治療期間中の転倒数,非使用者についてはほぼ同じ長さの追跡期間中の転倒数を調査し,転倒の率比を,可能性のある交絡因子で調整して算出した.

結 果

各種抗うつ薬の新規使用者は非使用者よりも転倒率が高く,調整後の率比は,三環系抗うつ薬が 2.0(95%信頼区間,1.8~2.2),選択的セロトニン再吸収阻害薬が 1.8(95%信頼区間,1.6~2.0),トラゾドンが 1.2(95%信頼区間,1.0~1.4)であった.率比は,1 日量に比例して増大し,三環系抗うつ薬ではアミトリプチリンの 50 mg 以上またはその等価用量で 2.4 に達し(95%信頼区間,2.1~2.8),セロトニン再吸収阻害薬ではフルオキセチンの 20 mg 以上またはその等価用量で 1.9 に達した(95%信頼区間,1.7~2.2).転倒率の高さは治療開始後 180 日間続き,それ以降も持続した.

結 論

今回のナーシングホーム入居者を対象とした大規模試験では,三環系抗うつ薬および選択的セロトニン再吸収阻害薬の治療を受けた患者の転倒率に,ほとんど差が認められなかった.したがって,抗うつ薬を服用しているナーシングホーム入居者に新しい抗うつ薬を優先的に使用しても,高い転倒率が低下する可能性は低い.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1998; 339 : 875 - 82. )