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May 11, 2000 Vol. 342 No. 19

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急性期ケアおよび長期ケアへの支出に対する長寿の影響
The Effect of Longevity on Spending for Acute and Long-Term Care

B.C. SPILLMAN AND J. LUBITZ

背景

米国では,高齢者によって構成される人口割合が,2000 年には人口の 13%であるのが,2030 年までには 20%にまで上昇すると推定されている.高齢者は若い人よりも保健医療サービスを利用する割合が大きいということから,このことの保健医療費における意味は深いということが考えられる.そこで,われわれは,65 歳から死亡するまでの期間と人生最後の 2 年間における急性期ケアと長期ケアの総費用を推計した.

方 法

メディケア(老齢者医療保障制度),全国死亡フォローバック調査(National Mortality Followback Survey),および国民医療費調査(National Medical Expenditure Survey)のデータを併合して,保健医療費についての死亡年齢別の国家の総支出額を推定した.また,次の二つのコホートについての推定人口統計学的特性を用いて,医療費のシミュレーションも行った:すなわち 2000 年に 65 歳になる人のコホートと 2015 年に 65 歳になる人のコホートである.

結 果

65 歳から死亡するまでの総費用(1996 年時点におけるドル換算)は,長生きするのとともにかなり増加し,65 歳で死亡する人では $ 31,181 であるのが,90 歳で死亡する人では $ 200,000 を超えることになる.これは,一つには,非常に高齢な人々のナーシングホームの費用が急激に増加するためである.人生の最後の 2 年間に費やされる医療費も,長生きするのとともに増加するが,メディケアの費用の減少(75 歳で死亡する人では $ 37,000,95 歳で死亡する人では $ 21,000)によって,ナーシングホームの費用の増加(75 歳で死亡する人では $ 6,000,95 歳で死亡する人では $ 32,000)による影響が和らげられる.女性に費やされる保健医療費は,女性が長生きであることで補正しても,終始一貫して,男性の保健医療費よりも高くなっている.シミュレーションの結果は,2000~15 年は,予想される支出額の増加に対する 65 歳以降の寿命の延長による影響が比較的小さいこと,とくにメディケアで提供される医療サービスの支出額の増加に対する影響が小さいことを示している.1950 年に出生した人口が 1935 年に出生した人口よりも多くなることの影響と,65 歳まで生きる人口が増えることの影響のほうが,ずっと重大である.

結 論

米国では,急性期ケアの費用に対する長寿の影響と,長期ケアの費用に対する長寿の影響は異なっている.急性期ケアの費用は,主として病院での医療と医師のサービスの費用であり,死亡年齢が高くなるにつれて増加するものの,その増加速度は減速していく.これに対して,長期ケアの費用は加速度的に増加する.65 歳以降の寿命の延長は,長期ケアに費やされる医療費を増加させる結果になると考えられるが,高齢者の人口増加による保健医療費の総支出に対する影響のほうが重大である.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2000; 342 : 1409 - 15. )