透析を受けている末期腎疾患の若年成人における冠動脈の石灰化
Coronary-Artery Calcification in Young Adults with End-Stage Renal Disease Who Are Undergoing Dialysis
W.G. GOODMAN AND OTHERS
心血管疾患は,定期的に透析を受けている末期腎疾患の高齢成人ではよくみられるが,このような末期腎疾患の小児および若年成人における心血管疾患の有病率と程度についてはほとんど知られていない.
電子ビームコンピュータ断層写真(CT)を用いて,透析を受けていた末期腎疾患の若年患者 39 例(平均[±SD]年齢,19±7 歳;範囲,7~30 歳)と,年齢が 20~30 歳の正常被験者 60 例について,冠動脈の石灰化をスクリーニングした.CT スキャンで石灰化を示す所見が得られた患者については,その程度についても決定した.これらの結果には,患者の臨床特性,血清中のカルシウム濃度とリン濃度,および他の生化学変数との相関を検討した.
冠動脈の石灰化を示す所見が認められた患者は,20 歳未満の 23 例の患者には 1 例もいなかったが,20~30 歳の患者では 16 例中の 14 例に認められた.石灰化が認められた患者の石灰化スコアは,平均値では 1,157±1,996,中央値では 297 であった.これらの患者に対して正常被験者では,60 例中の 3 例に石灰化が認められただけであった.冠動脈の石灰化が認められた患者は,石灰化が認められなかった患者と比較すると,年齢が高く(26±3 歳 対 15±5 歳,p<0.001),透析を受けてきた期間が長かった(14±5 年間 対 4±4 年間,p<0.001).また,冠動脈の石灰化が認められた患者では,血清リンの平均濃度が高く,血清中の平均カルシウム–リンのイオン積が大きく,経口カルシウム摂取量も多かった.追跡調査で CT スキャンの検査を受けた10 例の患者では,平均で 20±3 ヵ月間の追跡期間中に,石灰化スコアは 2 倍近くにまで上昇した(125±104 から 249±216 への上昇,p=0.02).
冠動脈の石灰化は,透析を受けている末期腎疾患の若年成人にも一般的に起り,しかも進行性である.