一卵性および二卵性双生児における老人性核性白内障の遺伝因子と環境因子
Genetic and Environmental Factors in Age-Related Nuclear Cataracts in Monozygotic and Dizygotic Twins
C.J. HAMMOND, H. SNIEDER, T.D. SPECTOR, AND C.E. GILBERT
老人性白内障は公衆衛生の大きな問題の一つである.核性白内障は老人性白内障のもっとも一般的な病型の白内障であるが,その病因における遺伝と環境の相対的な重要性については明らかではない.
われわれは,年齢が 50~79 歳(平均年齢,62 歳)の 506 組の女性の双生児(一卵性双生児 226 組,二卵性双生児 280 組)を対象とした検討を行った.右眼および左眼の核性白内障の混濁の程度を,Scheimpflug レンズ写真の分析による客観的評価(三つの測定)と,オックスフォードの臨床白内障分類および重症度の評価基準(the Oxford Clinical Cataract Classification and Grading System)を用いた主観的評価(一つの測定)によって測定した.次に,この合計で八つの測定尺度(片眼四つづつ)を,それぞれの女性ごとに併合して一つの核性白内障の要約評価尺度とした.これらの各測定尺度に対する遺伝的寄与と環境的寄与の分散の推定には,最尤法に基づく単変量モデルを使用した.
白内障の形成に関するそれぞれの測定尺度には,高い相関性が認められた(相関係数,0.71~0.94).また,これらの測定尺度の平均スコアは,右眼と左眼で,また一卵性双生児と二卵性双生児で同程度であった.核性白内障の各測定尺度のスコアごとに行った量的遺伝のモデル構築では,常に,相加的遺伝効果,個別の環境効果,および年齢を含んだ最適モデルが得られた.共通の環境効果と優性の遺伝効果については,適合度を有意に低下させることなく,おのおののモデルから取り除くことができた.核性白内障の併合スコアを用いた全体的の遺伝性(遺伝因子によって説明される分散の割合)は,48%であった(95%信頼区間,42~54%); 年齢によって説明される分散の割合が 38%(95%信頼区間,31~44%),個別の環境効果によって説明される分散の割合が 14%(95%信頼区間,12~18%)であった.
遺伝効果は,核性白内障のような明らかな老人性疾患においてさえも重要な役割を演じており,この核性白内障の重症度にみられた変動の約 50%が遺伝効果によって説明される.