December 14, 2000 Vol. 343 No. 24
米国の 20 都市における微粒子状物質による大気汚染と死亡,1987~1994 年
Fine Particulate Air Pollution and Mortality in 20 U.S. Cities, 1987–1994
J.M. SAMET AND OTHERS
都市の大気汚染は,先進国においても,また発展途上国においても死亡率と罹患率の上昇に結びついている.これらの知見は大気の環境基準を厳しくする一助となったが,公衆衛生における妥当性は疑問視されている.
1987~94 年に,屋外の主要な大気汚染物質 5 種類について,米国の大都市圏および首都圏の 20 地域において,日々の死亡率に対する影響についての評価を行った.今回検討した汚染物質は,空気力学的直径が 10 μm 未満の粒子状物質(PM10),オゾン,一酸化炭素,二酸化硫黄,および二酸化窒素であった.今回の解析には,複数の場所から得られたデータを併合した 2 段階解析法を採用した.
他の汚染物質による交絡の可能性を考慮すると,PM10 の濃度が,全死因死亡率,心血管系および呼吸器系の疾患による死亡率に関連しているということを示す終始一貫した結果が得られた.全死因相対死亡率は,PM10 の濃度が 10 μg/m3 上昇するごとに 0.51%(事後分布の 95%信頼区間,0.07~0.93%)上昇すると推定された.心血管系および呼吸器系の原因による相対死亡率は,PM10 の濃度が 10 μg/m3 上昇するごとに 0.68%(事後分布の 95%信頼区間,0.20~1.16%)上昇すると推定された.オゾンについては,オゾン濃度がもっとも高くなる夏期では相対死亡率が上昇し,冬期には相対死亡率の上昇は認められないという結果が得られたが,根拠は弱かった.その他の汚染物質については,それらの濃度と死亡率のあいだには有意な関連は認められなかった.
大気中の微粒子状物質の濃度が,全死因死亡と心血管系および呼吸器系の疾患による死亡のリスクに関連しているということの根拠となる終始一貫した結果が得られた.これらの研究結果は,屋外の大気中における吸入粒子の濃度を規制するために論じられている論理的根拠を強固にするものである.