放射線撮影用造影剤によって誘発される腎機能低下に対するアセチルシステインによる予防
Prevention of Radiographic-Contrast-Agent–Induced Reductions in Renal Function by Acetylcysteine
M. TEPEL AND OTHERS
放射線撮影用造影剤は腎機能を低下させることがあるが,その原因は活性酸素種によるものと考えられている.しかしながら,この腎機能の低下は,抗酸化薬を投与することによって予防できるのか否かということについてはわかっていない.
非イオン型の低浸透圧性造影剤であるイオプロミドを用いたコンピュータ断層撮影法(CT)の検査を受ける予定になっていた慢性腎不全の患者 83 例を対象として(平均 [±SD] 血清クレアチニン濃度,2.4±1.3 mg/dL [216±116 μmol/L]),前向き試験を実施した.これらの患者を,抗酸化薬であるアセチルシステイン(600 mg の 1 日 2 回経口投与)と造影剤の投与前後の 0.45%食塩水の静脈内投与,またはプラセボと食塩水の投与のいずれかに無作為に割り付けた.
血清クレアチニン濃度は,83 例中 10 例(12%)で,造影剤の投与後 48 時間に 0.5 mg/dL(44 μmol/L)以上上昇した.内訳は,アセチルシステイン群の 41 例中 1 例(2%)と,対照群の 42 例中 9 例(21%)であった(p=0.01;相対リスク,0.1;95%信頼区間,0.02~0.9).造影剤投与後 48 時間の時点における平均血清クレアチニン濃度は,アセチルシステイン群では 2.5±1.3 mg/dL から 2.1±1.3 mg/dL(220±118 μmol/L から 186±112 μmol/L)へと有意に低下したのに対して(p<0.001),対照群では,有意ではなかったものの(p=0.18),2.4±1.3 mg/dL から 2.6±1.5 mg/dL(212±114 μmol/L から 226±133 μmol/L)への上昇が認められた(群間比較で p<0.001).
慢性腎不全の患者において,水分補給を併用した抗酸化薬のアセチルシステインの予防的経口投与によって,非イオン型の低浸透圧性造影剤であるイオプロミドによって誘発される腎機能の低下を防ぐことができる.