December 28, 2000 Vol. 343 No. 26
米国における多剤耐性肺炎球菌(Streptococcus Pneumoniae)の保菌率の上昇
Increasing Prevalence of Multidrug-Resistant Streptococcus Pneumoniae in the United States
C.G. WHITNEY AND OTHERS
薬剤に耐性化した細菌株の出現によって,治療法の決定が複雑になってきただけでなく,治療が失敗に終わることもある.
われわれは,疾病予防管理センターの活動的細菌中央監視プログラム(the Active Bacterial Core Surveillance Program of the Centers for Disease Control and Prevention)において,1995~98 年に同定された患者の侵襲性の肺炎球菌疾患に関するデータを詳しく調べた.米国臨床検査標準化委員会(the National Committee for Clinical Laboratory Standards)の定義に従って高度耐性あるいは中等度耐性と分類された肺炎球菌を,「耐性」と定義した.
1998 年には,侵襲性の肺炎球菌 Streptococcus Pneumoniae 疾患の症例が 4,013 例報告されていた(人口 100,000 人当り 23 例);このうちの 3,475 例(87%)では,臨床株が分離されていた.全体では,1988 年以降に分離された臨床株の 24%がペニシリン耐性であった.ペニシリン耐性分離株の割合がもっとも高かったのは,ジョージア州(33%)とテネシー州(35%),5 歳未満の小児(32%,これに対して 5 歳以上では 21%),および白人(26%,これに対して黒人では 22%)であった.ペニシリン耐性分離株は,ペニシリン以外の抗菌薬に対しても高度に耐性化している傾向がみられた.7 価および 23 価の肺炎球菌多糖類ワクチンに含まれる血清型が,ペニシリン耐性株のそれぞれ 78%および 88%を占めていた.1995~98 年までの期間(この期間に,12,045 株の臨床分離株が収集されていた)に,3 系統以上の薬剤に耐性の分離株の割合は 9%から 14%に上昇していた;また,ペニシリン(21%から 25%に上昇),セフォタキシム(10%から 14%に上昇),メロペネム(10%から 16%に上昇),エリスロマイシン(11%から 15%に上昇),およびトリメトプリム–サルファメトキサゾール(trimethoprim–sulfamethoxazole)(25%から 29%に上昇)に耐性の分離株の割合が上昇していた.その他の抗菌薬に対する耐性菌の頻度は,ペニシリン耐性株でのみ増加していた.
多剤耐性肺炎球菌は,しばしば検出され,増加傾向にある.薬剤耐性株によるほとんどの感染症が限られた種類の血清型で占められているので,新しい抱合型ワクチンによって,S. pneumoniae のほとんどの薬剤耐性株に対する予防手段を提供することができるだろう.