投与された麻薬が原因と判明したセラチア菌(Serratia marcescens)による菌血症
Serratia marcescens Bacteremia Traced to an Infused Narcotic
B.E. OSTROWSKY AND OTHERS
1998 年 6 月 30 日~1999 年 3 月 21 日,ある病院の外科集中治療室の患者の一部にセラチア菌(Serratia marcescens)による菌血症が発生した.われわれはこの集団発生について調査した.
症例は,この流行期間に外科集中治療室にいた患者に起った S. marcescens による菌血症とした.危険因子を同定するために,S. marcescens 菌血症患者群と無作為に選択した対照群を比較した.患者および薬物からの分離株は,パルスフィールドゲル電気泳動法によって評価した.医療従事者 1 人の毛髪について,フェンタニル検査を行った.
S. marcescens 菌血症患者 26 例が同定された;8 例(31%)は多菌種による菌血症で,うち 7 例は同一培養内に Enterobacter cloacae と S. marcescens が認められた.単変量解析によると,S. marcescens 菌血症患者は対照群よりも長く外科集中治療室におり(13.5 日 対 4.0 日,P<0.001),外科集中治療室におけるフェンタニル投与率が高く(オッズ比 31;P<0.001),また特定の 2 人の呼吸療法士との接触頻度が高かった(オッズ比 13.1 と 5.1;ともに P<0.001).多変量解析においても,フェンタニル投与率ならびにこの 2 人の呼吸療法士との接触頻度はやはり有意であった(1 人の呼吸療法士に対する補正オッズ比 6.7;P=0.002;もう 1 人の呼吸療法士に対する補正オッズ比 9.5;P=0.02).1 人の呼吸療法士がフェンタニルを不正使用していると報告されていた;この療法士の毛髪検体はフェンタニル検査陽性であった.症例患者 2 例のフェンタニル注射液の培養から S. marcescens と E. cloacae が検出された.症例患者からの分離株とフェンタニル注射液からの分離株は,パルスフィールドゲル電気泳動法において同様のパターンを示した.関与していた呼吸療法士を解任したあと,それ以上の症例は発生しなかった.
外科集中治療室における S. marcescens と E. cloacae による菌血症の集団発生は,医療従事者による非経口麻薬フェンタニルの外的汚染が原因であると判明した.われわれの知見は,医療従事者による麻薬の不法使用と関連する患者の合併症リスクを明らかにしている.