January 7, 2016 Vol. 374 No. 1
エボラウイルス病に関連した死亡に対するアーテスネート・アモジアキン合剤の効果
Effect of Artesunate–Amodiaquine on Mortality Related to Ebola Virus Disease
E. Gignoux and Others
西アフリカでエボラウイルス病(EVD)が疑われる患者には,マラリア治療を体系的に行うか,マラリアの診断が確定した例に行うことが推奨されている.リベリアのロファ郡フォヤにあるエボラ治療センターでは,2014 年 8 月の 12 日間,抗マラリア薬の第一選択薬であるアーテメター・ルメファントリン(artemether–lumefantrine)合剤の備蓄が底をついた.この期間,患者には,アーテスネート・アモジアキン(artesunate–amodiaquine)合剤が投与された.アモジアキンは,in vitro で抗エボラウイルス活性が示されている.この期間に,患者のケアにそれ以外の明らかな変更はなかった.
未補正および補正後の回帰モデルを,標準化した患者別のデータに当てはめ,アーテスネート・アモジアキンを処方された EVD 確定例(アーテスネート・アモジアキン群)を,アーテメター・ルメファントリンを処方された EVD 確定例(アーテメター・ルメファントリン群),抗マラリア薬を処方されなかった EVD 確定例(抗マラリア薬非投与群)と比較して,死亡のリスク比を推定した.
2014 年 6 月 5 日~10 月 24 日に,EVD 確定例 382 例がフォヤのエボラ治療センターに入院した.入院時に,194 例がアーテメター・ルメファントリン,71 例がアーテスネート・アモジアキンを処方された.アーテスネート・アモジアキン群の患者背景は,アーテメター・ルメファントリン群,抗マラリア薬非投与群と類似していた.アーテメター・ルメファントリン群では 194 例中 125 例(64.4%)が死亡したのに対し,アーテスネート・アモジアキン群では 71 例中 36 例(50.7%)が死亡した.補正後の解析では,アーテスネート・アモジアキン群では死亡リスクがアーテメター・ルメファントリン群よりも 31%低く(リスク比 0.69,95%信頼区間 0.54~0.89),マラリアでない患者でより強い効果が認められた.
アーテスネート・アモジアキンを処方された患者では,アーテメター・ルメファントリンを処方された患者と比較して,EVD による死亡のリスクが低かった.しかし,今回の解析では,アーテメター・ルメファントリンが死亡リスクの上昇に関連する可能性や,アーテスネート・アモジアキンの使用が死亡リスクを直接的に変化させる未検討の患者背景に関連していた可能性を排除することはできない.