元全米フットボールリーグ選手におけるタウ陽電子放射断層撮影
Tau Positron-Emission Tomography in Former National Football League Players
R.A. Stern and Others
慢性外傷性脳症(CTE)は,反復性の頭部衝撃の既往との関連が示されている神経変性疾患である.神経病理学的診断は,タウの蓄積を認めるがアミロイドβの沈着はほとんど認めないという,アルツハイマー病など他の疾患とは異なる特異的なパターンに基づいて行われる.CTE のリスクがあり,生存している人の脳内で,タウ蓄積とアミロイド沈着の検出が実行可能かどうかは,十分な研究が行われていない.
認知症状・神経精神症状を有する元全米フットボールリーグ(NFL)選手と,外傷性脳損傷の既往がない無症状の男性において,脳内のタウ蓄積とアミロイドβ沈着を測定するために,それぞれフロルタウシピル(flortaucipir)陽電子放射断層撮影(PET)とフロルベタピル PET を行った.自動画像解析アルゴリズムを用いて,領域ごとのタウの標準取込み値比(SUVR;小脳における放射線測定値を基準とした場合の,特定の脳領域における放射線測定値の比)を 2 群間で比較し,元選手群の SUVR と,症状の重症度および競技年数との関連を探索的に検討した.
元選手 26 例と対照 31 例を解析の対象とした.フロルタウシピルの SUVR の平均は,元選手のほうが対照よりも,両側上前頭葉(1.09 対 0.98,補正後の差の平均 0.13,95%信頼区間 [CI] 0.06~0.20,P<0.001),両側内側側頭葉(1.23 対 1.12,補正後の差の平均 0.13,95% CI 0.05~0.21,P<0.001),左頭頂葉(1.12 対 1.01,補正後の差の平均 0.12,95% CI 0.05~0.20,P=0.002)の 3 つの脳領域で高かった.探索的解析では,この 3 領域における SUVR と競技年数との相関係数はそれぞれ 0.58(95% CI 0.25~0.79),0.45(95% CI 0.07~0.71),0.50(95% CI 0.14~0.74)であった.タウ蓄積と認知機能検査および神経精神学的検査のスコアとのあいだに関連は認められなかった.元選手 1 例にのみ,アルツハイマー病患者と同程度のアミロイドβ沈着が認められた.
生存し,認知症状・神経精神症状を有する元 NFL 選手の 1 群では,CTE の影響を受けている脳領域において PET で測定されるタウ値が対照よりも高く,アミロイドβ値は高くなかった.CTE に関連するタウ高値が個々の人で検出できるかどうかを明らかにするには,さらなる研究が必要である.(アビッド レディオファーマシューティカルズ社ほかから研究助成を受けた.)