全身性強皮症に伴う間質性肺疾患に対するニンテダニブ
Nintedanib for Systemic Sclerosis–Associated Interstitial Lung Disease
O. Distler and Others
間質性肺疾患(ILD)は全身性強皮症によくみられる症状であり,全身性強皮症関連死の主な原因である.チロシンキナーゼ阻害薬であるニンテダニブは,全身性強皮症と ILD の前臨床モデルにおいて,抗線維化作用と抗炎症作用をもつことが示されている.
全身性強皮症に伴う ILD 患者に対するニンテダニブの有効性と安全性を検討する無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った.全身性強皮症を有し,過去 7 年以内にレイノー症状以外の症状がはじめて発現し,高分解能 CT で肺の 10%以上に線維化が認められた患者を,ニンテダニブ 150 mg を 1 日 2 回経口投与する群とプラセボを投与する群に,1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要評価項目は努力肺活量(FVC)の年間低下率とし,52 週間評価した.主な副次的評価項目は,52 週の時点における修正 Rodnan 皮膚スコアとセントジョージ呼吸器質問票(SGRQ)の総スコアの,ベースラインからの絶対値の変化量とした.
576 例がニンテダニブまたはプラセボの投与を 1 回以上受けた.51.9%がびまん皮膚硬化型全身性硬化症であり,48.4%がベースラインでミコフェノール酸の投与を受けていた.主要評価項目の解析において,FVC の調整年間変化率は,ニンテダニブ群で -52.4 mL/年,プラセボ群で -93.3 mL/年であった(差 41.0 mL/年,95%信頼区間 [CI] 2.9~79.0,P=0.04).欠測データに対する多重代入法に基づく感度分析では,主要評価項目の P 値は 0.06~0.10 となった.52 週の時点における修正 Rodnan 皮膚スコアと SGRQ 総スコアのベースラインからの変化量に群間で有意差は認められず,差はそれぞれ -0.21(95% CI -0.94~0.53,P=0.58)と 1.69(95% CI -0.73~4.12 [多重比較の調整なし])であった.もっとも頻度が高かった有害事象は下痢であり,ニンテダニブ群の 75.7%とプラセボ群の 31.6%で報告された.
全身性強皮症に伴う ILD 患者では,FVC の年間低下率はニンテダニブ群のほうがプラセボ群よりも小さく,ニンテダニブに,全身性強皮症のほかの症状に対する臨床的利益は認められなかった.この試験で観察されたニンテダニブの有害事象プロファイルは,特発性肺線維症患者で観察されたものと類似しており,下痢などの消化器系有害事象の発現頻度は,ニンテダニブ群のほうがプラセボ群よりも高かった.(ベーリンガーインゲルハイム社から研究助成を受けた.SENSCIS 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02597933)