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July 25, 2019 Vol. 381 No. 4

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重症外傷患者における下大静脈フィルターの多施設共同試験
A Multicenter Trial of Vena Cava Filters in Severely Injured Patients

K.M. Ho and Others

背景

予防的抗凝固療法が禁忌の重症外傷患者に下大静脈フィルターを早期に留置することで,肺塞栓症または死亡のリスクが低下するかどうかはわかっていない.

方 法

多施設共同無作為化比較試験において,抗凝固薬が禁忌の 240 例の重症外傷患者(外傷重症度スコア [ISS]>15 [スコアの範囲は 0~75 で,高いほど重症であることを示す])を,外傷で入院後 72 時間以内に下大静脈フィルターを留置する群と,留置しない群に割り付けた.主要エンドポイントは,登録後 90 日の時点での症候性肺塞栓症または全死因死亡の複合とした.副次的エンドポイントの 1 つは,7 日以上生存し,受傷後 7 日以内に予防的抗凝固療法を受けなかったサブグループにおける 8~90 日目の症候性肺塞栓症とした.全例が 2 週の時点で下肢の超音波検査を受けた.また,事前に規定した基準を満たした場合は CT 肺血管造影も必須とした.

結 果

患者の年齢の中央値は 39 歳であり,ISS の中央値は 27 であった.下大静脈フィルターを早期に留置した患者の症候性肺塞栓症または死亡の発生率は,留置しなかった患者と比較して有意に低くならかった(下大静脈フィルター群 13.9%と対照群 14.4%,ハザード比 0.99,95%信頼区間 [CI] 0.51~1.94,P=0.98).受傷後 7 日以内に予防的抗凝固療法を受けなかった下大静脈フィルター群 46 例と対照群 34 例のサブグループのうち,肺塞栓症を発症した患者は,下大静脈フィルター群 0 例,対照群 5 例(14.7%)で,うち 1 例は死亡した(肺塞栓症の相対リスク 0,95% CI 0.00~0.55).6 例でフィルターに捕捉された血栓が確認された.

結 論

重大な外傷を負った患者に,予防目的で早期に下大静脈フィルターを留置しても,留置しなかった場合と比較して,90 日の時点での症候性肺塞栓症または死亡の発生率は低くならなかった.(ロイヤルパース病院医学研究財団ほかから研究助成を受けた.Australian New Zealand Clinical Trials Registry 番号 ACTRN12614000963628)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2019; 381 : 328 - 37. )