October 16, 2025 Vol. 393 No. 15
アデノシンデアミナーゼ欠損症に対する遺伝子治療の長期の安全性と有効性
Long-Term Safety and Efficacy of Gene Therapy for Adenosine Deaminase Deficiency
C. Booth and Others
アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症による重症複合免疫不全症(SCID)(ADA-SCID)は,生命を脅かす先天性免疫異常症であり,レンチウイルスを用いた遺伝子治療が臨床試験で検討されている.
2012~19 年に,ADA-SCID 患者に対し,ブスルファンによる骨髄非破壊的前処置後,体外でヒト ADA をコードするレンチウイルスベクターを用いて遺伝子導入した自家 CD34 陽性造血幹細胞を移植した.主要有効性評価項目は,全生存と無イベント生存(レスキュー同種造血幹細胞移植,酵素補充療法の再開,追加の遺伝子治療が行われていない状態での生存と定義)とした.副次的評価項目は,免疫グロブリン補充療法を受けていないこと,破傷風ワクチンまたは肺炎球菌ワクチンに対する防御を示す抗体価を有すること,真菌・ウイルス感染予防の中止を継続していることなどとした.今回は,474 患者年,追跡期間中央値 7.5 年の長期追跡結果を報告する.
米国 33 例,英国 29 例の,計 62 例の ADA-SCID 患者を治療した.全生存率は 100%,無イベント生存率は 95%(62 例中 59 例)であった.6 ヵ月の時点で遺伝子標識による生着が確認された 59 例は,全例が,最終追跡調査時まで酵素補充療法が再開されることなく,遺伝子標識,ADA 酵素活性,解毒代謝,免疫再構築が安定していた.このうち 58 例(98%)は,IgG 補充療法を中止し,ワクチン接種に対する頑健な反応が認められた.白血球増殖イベントやクローン性増殖が認められた患者はいなかった.
大規模患者コホートにおける長期の知見から,ADA-SCID に対する,自家 CD34 陽性造血幹細胞を用いたレンチウイルス遺伝子治療の臨床的有効性と安全性の持続が確認され,この治療法が根治的治療であることが示された.(米国国立心臓・肺・血液研究所ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04049084)