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October 23, 2025 Vol. 393 No. 16
臨床コホートにおける頻度の高い疾患 ― 必ずしも見かけどおりではない
Common Diseases in Clinical Cohorts — Not Always What They Seem
F. Rahimov and Others
頻度の高い疾患と診断された患者における希少疾患の誤診または過小診断は,治療の遅れや不適切な治療につながり,希少疾患と頻度の高い疾患の両方の管理を困難にする可能性がある.分子診断技術の進歩にもかかわらず,研究や臨床試験における頻度の高い疾患の診断に対する希少疾患の影響について,包括的な調査は行われていない.
英国バイオバンク,1 件の研究,一次診断が多発性硬化症,炎症性腸疾患,アトピー性皮膚炎のいずれかであった患者を対象とした 5 件の臨床試験の参加者のエクソームシーケンシングデータとゲノムシーケンシングデータを用いて,これらの頻度の高い疾患の臨床症状と重複する症状で発症することの多い単一遺伝子性希少疾患の発生率を評価した.
英国バイオバンクの参加者において,単一遺伝子性疾患の分子診断に寄与するまれなバリアントを有する 153 例が同定された.内訳は,多発性硬化症と診断された 1,850 例中 53 例(2.86%),炎症性腸疾患と診断された 6,681 例中 75 例(1.12%),アトピー性皮膚炎と診断された 998 例中 25 例(2.50%)であった.このような希少疾患を引き起こすバリアントに関する結果を,2 つの独立したコホートで再現することができた.1 つは多発性硬化症と診断された患者を組み入れたコホート,もう 1 つは炎症性腸疾患と診断された患者を組み入れたコホートであり,それぞれ研究および臨床試験のためのゲノムシーケンシングが行われていた.ゲノム解析とトランスクリプトーム解析を組み合わせることにより,治療介入に対する反応が不十分となる機序を,分子診断で説明できる可能性があることを明らかにした.
この研究は,頻度の高い疾患の表現型における多様性を理解し,希少疾患の診断の失敗を特定するうえで,体系的なゲノムシーケンシングが有用であることを示し,臨床試験と患者ケアにおける分子ディープフェノタイピングの利益を強調している.(アッヴィ社,NIHR ケンブリッジ生物医学研究センターから研究助成を受けた.)







