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October 23, 2025 Vol. 393 No. 16
診断後 1 年以内の肺動脈性肺高血圧症に対するソタテルセプト
Sotatercept for Pulmonary Arterial Hypertension within the First Year after Diagnosis
V.V. McLaughlin and Others
アクチビンシグナル伝達阻害薬ソタテルセプトは,罹病期間の長い肺動脈性肺高血圧症患者の合併症発生率と死亡率を低下させる.診断後 1 年以内の肺動脈性肺高血圧症患者に対するソタテルセプトの効果は明らかにされていない.
第 3 相試験で,世界保健機関(WHO)機能分類 II 度または III 度の肺動脈性肺高血圧症を有し,診断後 1 年未満であり,死亡リスクが中等度または高度で,2 剤または 3 剤による基礎治療を受けている成人患者を組み入れた.患者を,追加治療としてソタテルセプト(開始用量を 0.3 mg/kg 体重とし,目標用量の 0.7 mg/kg まで漸増)を 21 日ごとに皮下投与する群と,プラセボを投与する群に無作為に割り付けた.主要評価項目は臨床的悪化とし,全死因死亡,肺動脈性肺高血圧症の悪化による予定外入院(24 時間以上),心房中隔裂開術,肺移植,肺動脈性肺高血圧症による運動負荷試験の成績低下の複合と定義し,生存時間(time-to-first-event)解析で評価した.
いくつかの先行試験からソタテルセプトの肯定的結果が報告され,臨床的均衡が失われたため,試験は早期に中止された.320 例が組み入れられた(ソタテルセプト群 160 例,プラセボ群 160 例).追跡期間中央値は 13.2 ヵ月であった.主要評価項目のイベントが 1 件以上発生した患者は,ソタテルセプト群 17 例(10.6%),プラセボ群 59 例(36.9%)であった(ハザード比 0.24,95%信頼区間 0.14~0.41,P<0.001).肺動脈性肺高血圧症による運動負荷試験の成績低下は,ソタテルセプト群では 8 例(5.0%),プラセボ群では 46 例(28.8%)に発生し,肺動脈性肺高血圧症の悪化による予定外入院はそれぞれ 3 例(1.9%)と 14 例(8.8%)に発生し,全死因死亡はそれぞれ 7 例(4.4%)と 6 例(3.8%)に発生した.心房中隔裂開術,肺移植が行われた症例はなかった.ソタテルセプト群でとくに頻度が高かった有害事象は,鼻出血(31.9%)と毛細血管拡張(26.2%)であった.
診断後 1 年未満の肺動脈性肺高血圧症の成人では,基礎治療にソタテルセプトを追加した場合,プラセボを追加した場合よりも臨床的悪化のリスクが低くなった.(メルク シャープ アンド ドーム社 [メルク社の子会社,ニュージャージー州ローウェイ] から研究助成を受けた.HYPERION 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04811092)







