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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

March 21, 2002
Vol. 346 No. 12

ORIGINAL ARTICLES

  • 心筋梗塞後の除細動器の植込み
    Implantation of Defibrillators after Myocardial Infarction

    心筋梗塞後の除細動器の植込み

    心筋梗塞を起して左室駆出率が低下した患者は,心室性不整脈および突然死を起す危険性がある.この大規模試験では,患者は植込み型除細動器の使用と従来の治療法に,無作為に割付けられた.最長 4 年間の追跡調査期間において,死亡率は除細動器群のほうが従来療法群より低かった(14.2% 対 19.8%).

    除細動器療法の臨床効果は明白であり,この試験の被験者と同様な患者に対しては,抗不整脈薬療法の代りに,除細動器の植込みを検討すべきである.しかし,この手法を普及させるには非常に費用がかかるであろうから,この問題は製造業者や保険業者が取り組まなければならない.

  • ショック抵抗性の心室細動に対するアミオダロンとリドカインの比較
    Amiodarone versus Lidocaine for Shock-Resistant Ventricular Fibrillation

    心室細動は,院外心停止のもっとも多い主因である.除細動に抵抗性を示す症例では,補助的な抗不整脈療法としてリドカインが投与されることが多い.この無作為対照臨床試験では,救急救命士が実施したリドカイン静脈内投与とアミオダロン静脈内投与を比較し,アミオダロンのほうが優れており,生存して入院する率が上昇したことを明らかにした.

    ショック抵抗性心室細動の補助療法としては,現在,リドカインではなくアミオダロンが最善の選択薬であろう.しかし,アミオダロンにより,生存して入院する率は改善されるが,生存して退院する率は依然として低い.

  • 皮膚リーシュマニア症治療のためのフルコナゾール
    Fluconazole for the Treatment of Cutaneous Leishmaniasis

    皮膚リーシュマニア症治療のためのフルコナゾール

    この無作為試験では,皮膚リーシュマニア症の治療法として,6 週間毎日 200 mg のフルコナゾールを経口投与した場合の効果を評価した.患者 145 例に関する追跡調査のデータがあり,単離された寄生虫はすべてリーシュマニア原虫(Leishmania major)と確認された.治療終了後 3 ヵ月で,フルコナゾール群の患者の 79%で病変の完全治癒が認められたのに対し,プラセボ群の患者ではわずか 34%であった.

    サウジアラビアで実施されたこの二重盲検試験は,経口投与されたフルコナゾールが皮膚リーシュマニア症に対して安全で効果的な治療法であることを示している.五価アンチモン化合物を用いた治療は,非経口投与を必要とし,重大な毒性作用を示すことが多いことから,効果的な経口薬が必要である.

  • 肺高血圧症に対するボセンタン
    Bosentan for Pulmonary Hypertension

    肺高血圧症に対するボセンタン

    強力な血管収縮因子であり平滑筋分裂促進因子であるエンドセリン-1 は,肺高血圧症の病態発生において何らかの役割をもっている可能性がある.エンドセリン受容体拮抗薬ボセンタンの治療効果が,この無作為臨床試験で評価された.1 日 2 回 125 mg の用量のボセンタンは運動能力と機能分類を改善した.

    肺高血圧症は,相当の症状と死亡を伴う重篤な疾患である.現在の治療法には,抗凝固薬,カルシウムチャネル遮断薬,エポプロステノールやその誘導体が含まれる.肺高血圧症にエンドセリン受容体拮抗薬を用いることは,さらなる検討に値する新しいアプローチである.

SPECIAL ARTICLE

  • 老年医学的評価と管理
    Geriatric Evaluation and Management

    高齢入院患者合計 1,388 例を,老人入院病棟または一般入院病棟および老人外来または一般外来のいずれかで診療を受けるよう無作為に割付けた.いずれの老年医学的介入も 1 年後の死亡率に影響を与えず,全体で 21%であった.特別入院病棟でのケアは,機能評価尺度のいくつかと QOL について,退院時の改善と関連していた.

    約 20 年前,老人入院病棟でケアを受けた患者に対する無作為試験では,一般ケアを受けた患者の場合に比べて,死亡率の大幅な減少を示した.退役軍人医療センターより提供される老人医療に関してのより新しいこの多施設共同試験は,老年医学的評価・管理で,機能はやや改善するものの,死亡率は減少しないことを示している.

REVIEW ARTICLE

  • 疾患のメカニズム:食塩感受性高血圧のメカニズムとしての微細な後天性腎傷害
    Mechanisms of Disease: Subtle Acquired Renal Injury as a Mechanism of Salt-Sensitive Hypertension

    疾患のメカニズム:食塩感受性高血圧のメカニズムとしての微細な後天性腎傷害

    本態性高血圧患者の約半数に食塩感受性があり,食塩摂取量の減少は高血圧を改善する.この総説では,当初の微細な腎傷害が,どのようにして高血圧傾向を促進するかを説明している.腎臓は,多くの早期原発性高血圧患者でははじめは正常であるが,徐々に不顕性傷害を受け,細動脈硬化および尿細管間質性疾患をきたして,高血圧が確立される.

    将来的な治療の目標は,食塩感受性高血圧を永続させる細動脈および尿細管間質の傷害の治療におかれるだろう.

CASE RECORDS OF THE MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITAL

  • 突然の片眼失明
    Sudden Unilateral Blindness

    Case Records of the Massachusetts General Hospital

    80 歳の女性に頭痛と左眼に強い眼痛があり,続いて突然,完全に失明した.

SOUNDING BOARD

  • 世界たばこ条約交渉の将来
    The Future of the Global Tobacco Treaty Negotiations

    たばこビジネスは,世界的な公衆衛生危機を引き起している地球規模の事業である ― 2020 年までに,たばこに関連した疾患で毎年推定 840 万人が死亡するだろう.今週号の“Sounding Board”は,世界保健機構の世界保健総会で現在進行中である,この危機に対する対応 ― たばこ規制に関する国際的標準の確立を目的とする,「たばこ規制枠組み条約(Framework Convention on Tobacco Control)」と呼ばれる国際条約を作成し採択すること ― について,述べている.

    適正な税金と表示を要求し,商取引,受動喫煙および広告を管理する条項が,有効な条約には必要である.米国は,2003 年までに各国で批准準備が整う予定であるこの条約の交渉において,重要な役割を担っている.