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November 5, 1998 Vol. 339 No. 19

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急性前骨髄球性白血病における亜ヒ酸による治療後の完全寛解
COMPLETE REMISSION AFTER TREATMENT OF ACUTE PROMYELOCYTIC LEUKEMIA WITH ARSENIC TRIOXIDE

S.L. SOIGNET AND OTHERS

背景

中国からの二つの報告書は,亜ヒ酸が急性前骨髄球性白血病(APL)患者に完全寛解を誘導できることを示唆している.われわれは,この薬物の作用メカニズムを解明するために,APL 患者においてこの薬物を評価した.

方 法

以前の強力化学療法後に再発した APL 患者 12 人に対して,目視で確認できる白血病細胞が骨髄から消失するまで,0.06~0.2 mg/kg 体重/日の用量範囲の亜ヒ酸で治療した.骨髄単核細胞は,免疫表現型のためのフローサイトメトリー,螢光 in situ ハイブリダイゼーション,PMLRAR–α 融合転写物の検出のための逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)アッセイ,そしてアポトーシス関連蛋白カスパーゼ 1,2 および 3 の発現の検出のためのウェスタンブロット分析とによって連続的にモニターした.

結 果

調べた患者 12 人中,11 人が 12~39 日間(累積投与量の範囲,160~515 mg)の治療後に完全寛解になった.副作用は比較的軽度で,発疹,めまい,疲労,そして筋骨格の痛みであった.CD11b および CD33(それぞれ,成熟および未成熟細胞に特徴的な抗原である)の双方を発現し,螢光 in situ ハイブリダイゼーションによって t(15;17) 転座が検出された細胞は,治療期間中にその数が次第に増加し,完全寛解の初期相まで持続した.初回検査時に RT-PCR アッセイによる PMLRAR–α 融合転写物が陽性であった患者 11 人中 8 人は,後に試験したところ陰性となった;持続的に陽性であったその他の患者 3 人は早期に再発した.亜ヒ酸は,カスパーゼ 2 およびカスパーゼ 3 のプロ酵素の発現を誘導し,カスパーゼ 1 およびカスパーゼ 3 の両者の活性化を誘導した.

結 論

亜ヒ酸の低用量は再発した APL 患者において完全寛解を誘導することができる.臨床反応は,白血病細胞における不完全な細胞分化およびカスパーゼの活性化によるアポトーシスの誘導と関連する.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1998; 339 : 1341 - 8. )