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July 9, 1998 Vol. 339 No. 2

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膵臓移植後の糖尿病腎症の病変の改善
REVERSAL OF LESIONS OF DIABETIC NEPHROPATHY AFTER PANCREAS TRANSPLANTATION

P. FIORETTO, M.W. STEFFES, D.E.R. SUTHERLAND, F.C. GOETZ, AND M. MAUER

背景

尿毒症を起しておらず,腎移植を受けていない 1 型糖尿病患者では,膵臓移植を行っても,移植後 5 年間は糖尿病腎症の確立された病変は改善されないが,より長期間正常血糖が維持されることの効果はわかっていない.

方 法

1 型糖尿病であるが尿毒症を起しておらず,移植時に糖尿病腎症の軽度ないし進行病変を有した患者 8 人において,膵臓移植前と,移植後 5 年,10 年の時点で腎機能を調べ,腎生検を実施した.生検検体は形態計測学的に分析した.

結 果

患者全員,移植後は糖化ヘモグロビンの正常値が持続した.尿中アルブミン排泄量の中央値は,移植前 103 mg/日,移植後 5 年では 30 mg/日,移植後 10 年では 20 mg/日であった(ベースラインと移植後 5 年との比較に関して p = 0.07;ベースラインと移植後 10 年との比較に関して p = 0.11).平均(±SD)クレアチニンクリアランスは,ベースラインでの 108±20 mL/分/1.73 m2 体表面積から,移植後 5 年で 74±16 mL/分/1.73 m2 に減少し(p<0.001),移植後 10 年で 74±14 mL/分/1.73 m2 に減少した(p<0.001).糸球体基底膜の厚さと尿細管基底膜の厚さは,移植後 5 年(それぞれ,570±64 nm と 928±173 nm)とベースライン(594±81 nm と 911±133 nm)とで同程度であったが,移植後 10 年までに減少した(404±38 nm と 690±111 nm;ベースラインとの比較に関して,p<0.001 および p = 0.004).メサンギウムの体積率(糸球体に占めるメサンギウムの比率)は,ベースライン(0.33±0.07)から移植後 5 年までに増加したが(0.39±0.10,p = 0.02),移植後 10 年では減少し(0.27±0.02;ベースラインとの比較に関して p = 0.05,移植後 5 年との比較に関して p = 0.006),その主な理由はメサンギウム基質の減少であった.

結 論

膵臓移植は糖尿病腎症の病変を改善することができるが,改善には,正常血糖が 5 年を超えて持続する必要がある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1998; 339 : 69 - 75. )