石灰沈着性の肩腱炎に対する超音波療法
Ultrasound Therapy for Calcific Tendinitis of the Shoulder
G.R. EBENBICHLER AND OTHERS
超音波療法は石灰沈着性の肩腱炎の治療に用いられているが,その有効性については厳密な評価が行われていない.
そこで,われわれは,X 線写真で確認された症候性の石灰沈着性腱炎の患者を対象として,超音波照射とみせかけの照射の無作為二重盲検比較を実施した.これらの患者を,石灰沈着の全領域を対象として行う合計で 24 回の 15 分単位のパルス超音波(周波数,0.89 MHz;強度,2.5 W/cm2;パルスモード,1:4),またはこれと識別不能のみせかけの治療に割り付けた.15 回目までの治療は連日実施し(1 週間に 5 回),残りの 16 回目からの治療は 1 週間に 3 回の割合で 3 週間にわたって行った.無作為化は,患者ではなく,対象病変を有する肩に対して行ったので,両肩に肩腱炎を有する患者では,どちらか一方の治療,あるいは両方の治療を受ける可能性があった.
63 例の適格患者を順番に試験に組み入れた(対象病変は 70 肩).このうちの 54 例の患者(対象病変は 61 肩)が試験を完了した.すなわち,治療対象の肩病変は,超音波治療群が 32 肩,偽治療群が 29 肩であった.6 週間の治療終了後に,超音波治療群では,カルシウム沈着の消退が 6 肩(19%),50%以上の減少が 9 肩(28%)であったに対して,偽治療群ではそれぞれ 0 肩および 3 肩(10%)であった(p=0.003).9 ヵ月目の追跡調査来院時には,カルシウム沈着の消退および改善は,超音波治療群では 13 肩(42%)および 7 肩(23%)であったのに対して,偽治療群ではそれぞれ 2 肩(8%)および 3 肩(12%)であった(p=0.002).治療終了時には,超音波治療を受けた患者では,偽治療を受けた患者よりも疼痛の軽減および QOL の改善が大きかった;しかし 9 ヵ月目には,両群の差はもはや有意ではなかった.
超音波治療は,症状のある石灰沈着性の肩腱炎の患者において,石灰沈着の消退を助け,短期間の臨床症状の改善に関連している.