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May 27, 1999 Vol. 340 No. 21

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併用抗レトロウイルス療法を受けている患者における残存 HIV-1 複製の定量化
Quantifying Residual HIV-1 Replication in Patients Receiving Combination Antiretroviral Therapy

L. ZHANG AND OTHERS

背景

併用抗レトロウイルス療法は,ヒト免疫不全ウイルス 1 型(HIV-1)の感染患者において,血漿中のウイルス量を持続的に抑制することが可能である.しかしながら,それでもなお,ウイルスが感染して潜伏している休止記憶 CD4 リンパ球から,複製能を有するウイルスが回収されている;この知見から,HIV-1 が抗ウイルス治療で根絶が可能かどうかという大きな疑問がもちあがっている.

方 法

感染後早期に治療を開始して 2~3 年間の抗レトロウイルス療法後に,血漿中の HIV-1 RNA 量が検出限界以下になった 8 例の患者において,残存 HIV-1 が複製されていることを示すような証拠を探索した.末梢血単核球に潜む HIV-1 のプロウイルスの塩基配列が,時間とともに変化していくのかどうかについて検討した.すなわち,この変化は,残存ウイルスが複製されていることを示すものだろうと考えられた.さらに,HIV-1 RNA を活発に発現している細胞を同定するために,1 例の患者の組織を用いて,in situ ハイブリダイゼーションによる検討も行った.初感染の期間に同定されたプロウイルスの塩基配列数の減少と,経時的に直接測定した潜伏巣のサイズから,休止リンパ球に潜伏している複製能を有する HIV-1 の減少率を推定した.

結 果

8 例の患者のうちの 6 例については,治療中に,プロウイルスの塩基配列に有意な変異は認められなかった.しかしながら,残りの 2 例の患者には,この塩基配列に進化が認められたが,薬剤耐性ウイルスの遺伝子型が示唆されるような証拠は得られなかった.1 例の患者で行った多数の組織の in situ ハイブリダイゼーションによる検討から,ウイルスの複製が,リンパ組織で依然として行われていることを示すさらなる証拠が得られた.二つの独立した方法によって,われわれは,休止中の CD4 リンパ球に潜伏している複製能を有するウイルスの半減期が約 6 ヵ月間であると推定した.

結 論

以上の結果は,併用抗レトロウイルス療法がある程度の患者で HIV-1 の複製を抑制するが,すべての患者で抑制するわけではないことを示唆するものである.ウイルスが感染して潜伏している CD4 リンパ球の半減期を約 6 ヵ月間と仮定すると,この残存 HIV-1 のウイルス巣を根絶するには,有効な抗レトロウイルス治療を何年にもわたって行う必要があるのかもしれない.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 340 : 1605 - 13. )