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June 17, 1999 Vol. 340 No. 24

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イブチリド(Ibutilide)の前処理による心房細動に対する経胸壁的カルジオバージョンの増強効果
Facilitating Transthoracic Cardioversion of Atrial Fibrillation with Ibutilide Pretreatment

H. ORAL AND OTHERS

背景

心房細動は,経胸壁的カルジオバージョンによって洞リズムに戻すことが常に可能なわけではない.そこで,われわれは,従来の経胸壁的カルジオバージョンに抵抗性を示している心房細動の患者を対象に,第Ⅲ群抗不整脈薬であるイブチリド(Ibutilide)の除細動のエネルギー要求に対する効果を検討し,カルジオバージョンの増強効果に関してこの薬剤の価値を評価した

方 法

心房細動が平均(± SD)で 117 ± 201 日間持続していた患者 100 例を,イブチリドの 1 mg による前処理を行う,またはその前処理を行わない経胸壁的カルジオバージョンに無作為に割り付けた.経胸壁的カルジオバージョンの通電量を 50,100,200,300,360 ジュール(ワット秒)へと段階的に増加していくプロトコールを設計した.イブチリドの前処理を行わなかった患者で,経胸壁的カルジオバージョンが不成功に終った患者に対しては,イブチリドの投与を行って,再度,カルジオバージョンを試みた.

結 果

洞リズムへの回復は,イブチリド未投与の患者では 50 例中の 36 例(72%)で,イブチリド投与の患者では 50 例の全例(100%,p < 0.001)で得られた.経胸壁的カルジオバージョンの単独で洞リズムの回復に失敗した 14 例の患者では,イブチリドを投与してから,再度,カルジオバージョンを実施すると,全例が洞リズムを回復した.イブチリドの前処理は,除細動に必要な平均エネルギーの低下と関連していた(166 ± 80 ジュール,これに対して前処理を行わなかったときは 228 ± 93 ジュール; p < 0.001).持続性の多形性心室頻拍が,イブチリドの投与を受けた 64 例の患者の 2 例(3%)に発現したが,これらの患者の駆出率はどちらも 0.20 以下であった.6 ヵ月間の追跡調査後の心房細動の無再発率は,二つの無作為化群で同程度であった.

結 論

心房細動の洞リズムへの変換における経胸壁的カルジオバージョンの有効性は,イブチリドによって増強された.しかしながら,駆出率が極端に低下している患者に対しては,この薬剤の使用は避けるべきである.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 340 : 1849 - 54. )