February 25, 1999 Vol. 340 No. 8
医師が心カテーテル法を薦めるときの人種および性別の影響
THE EFFECT OF RACE AND SEX ON PHYSICIANS' RECOMMENDATIONS FOR CARDIAC CATHETERIZATION
K.A. SCHULMAN AND OTHERS
疫学調査から,患者の人種と性別によって心血管手技の施行に差があることが報告されている.この差が医師の薦める手技が異なることに起因しているのかどうかについてはいまだ明らかにされていない.
胸痛管理において医師がどのような医療を薦めているのかを評価するために,コンピュータによる調査方法を開発した.患者の症状を問診する場面を設定し,台本にそって,俳優がある特有の特徴をもった患者を演じた.プライマリケアの医師団体の二つの国内学会で行われた本調査に,720 例の医師が参加した.調査に参加した各医師には,録画された問診の場面をみせて,仮想患者のデータを提供した.その上で,各医師がその患者に薦める医療について調査した.多変量ロジスティック回帰分析を用いて,患者の年齢,冠動脈リスクの程度,胸痛の種類,および運動負荷試験の結果だけでなく,冠動脈疾患の確率についての医師の評価でも調整を行って,どのような治療を薦めるかということに対する患者の人種と性別の影響を評価した.
医師が推定した冠動脈疾患の確率の平均値(±SD)は,女性のほうが低く(確率,64.1±19.3%,これに対して男性は 69.2±18.2%;p<0.001),年齢の低い患者のほうが低く(55 歳の患者は 63.8±19.5%,これに対して 70 歳の患者は 69.5±17.9%;p<0.001),非狭心症性胸痛の患者のほうが低かった(58.3±19.0%,これに対して狭心症疑いの患者は 64.4±18.3%,狭心症が確定的な患者は 77.1±14.0%;p<0.001).ロジスティック回帰分析では,女性は男性よりも心カテーテル法に紹介される可能性が低く(オッズ比,0.60;95%信頼区間,0.4~0.9;p=0.02),黒人は白人よりも低かった(オッズ比,0.60;95%信頼区間,0.4~0.9;p=0.02).人種–性別の交互作用の解析では,黒人女性は,白人男性と比較して心カテーテル法に紹介される可能性が有意に低いことが示された(オッズ比,0.4;95%信頼区間,0.2~0.7;p=0.004).
今回の解析結果から,医師が胸痛をどのように管理するかには,患者の人種と性別が独立に影響していることが示唆される.