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October 7, 1999 Vol. 341 No. 15

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非潰瘍性食欲不振(NUD)の患者における Helicobacter pylori 除菌の有益性の欠如
Absence of Benefit of Eradicating Helicobacter pylori in Patients with Nonulcer Dyspepsia

N.J. TALLEY, N. VAKIL, E.D. BALLARD II, AND M.B. FENNERTY

背景

Helicobacter pylori による感染症と非潰瘍性食欲不振(NUD)との関連は解明されていない.われわれは,この感染症の治療によって食欲不振の症状が軽減するだろうという仮説を検証した.

方 法

H. pylori に感染した非潰瘍性食欲不振の患者を無作為に割り付け,170 例にオメプラゾール 20 mg,アモキシシリン 1,000 mg,クラリスロマイシン 500 mg を 1 日 2 回 14 日間投与し,167 例に外観が識別不能のプラセボを投与した;その後 12 ヵ月間にわたる定期的来院によって全患者の追跡調査を行った.患者の症状は,患者日誌に,各来院前の 7 日間の症状を記録させた.H. pylori の感染状態を調べるために,13C を用いた尿素呼気試験を,試験開始時に実施するとともに試験 1 ヵ月および 12 ヵ月の時点にも繰り返し行い,内視鏡生検も試験 12 ヵ月の時点に実施した.軽度の疼痛あるいは不快感しか残っていなかった場合,あるいはそれらの症状が完全に消失した場合に,その患者の治療は成功したと考えた.

結 果

H. pylori の除菌率は,試験 4~6 週間の時点で,実薬治療群が 90%,プラセボ群が 2%であった(p<0.001).しかしながら,治療の成功率には,試験 12 ヵ月の時点で治療群間に有意な差は認められなかった(実薬治療群が 46%,プラセボ群が 50%;実薬治療の相対的な成功確率 0.93;95%信頼区間,0.73~1.18;p=0.56).また,この試験 12 ヵ月の時点における治療の成功率は,H. pylori が陰性化した患者と H. pylori が陽性のままであった患者とのあいだに有意な差は認められなかった(48% 対 49%).食欲不振のタイプ(消化性潰瘍様,逆流様,または運動障害様)および QOL の変化をもとにして解析した治療の成功率も,同様の結果であった.試験 12 ヵ月の時点における治療の成功と慢性胃炎の組織学的改善とのあいだにも,有意な関連は認められなかった(p=0.68).

結 論

非潰瘍性食欲不振の患者において,H. pylori 感染症を治癒させることが症状の軽減につながることを示すような証拠は得られなかった.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 341 : 1106 - 11. )