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October 28, 1999 Vol. 341 No. 18

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社会経済学的状態が侵襲的心臓手技へのアクセスと急性心筋梗塞後の死亡に及ぼす影響
Effects of Socioeconomic Status on Access to Invasive Cardiac Procedures and on Mortality after Acute Myocardial Infarction

D.A. ALTER, C.D. NAYLOR, P. AUSTIN, AND J.V. TU

背景

国民皆保健医療制度は,収入ではなく必要性に基づいて医療が受けられる機会の保証と,すべての国民の健康状態を向上させることを目指すものである.そこで,われわれは,これらの目標に関して,カナダの保健制度の成果を調査するために,オンタリオ州において,近隣住民の収入が与える急性心筋梗塞後の侵襲的心臓手技を受ける機会,およびその後 1 年目までの死亡に対する影響を評価した.

方 法

1994 年 4 月~1997 年 3 月までの期間にオンタリオ州の病院に入院した急性心筋梗塞のすべての患者について,それぞれの医師のサービスに対する支払い請求,退院概要,および生存状態のデータを結びつけた.患者の収入レベルは,1996 年度のカナダ国勢調査で得られた患者の近隣住民の収入の中央値から算定した.急性心筋梗塞による当該入院後の冠動脈血管造影法および血行再建術の手技の施行率と待機時間を調査するとともに,1 年目までの死亡率を算出した.多変量解析では,患者の年齢,性別,心疾患の重症度;主治医の専門領域;入院した病院の心筋梗塞の症例数,指導状況,心臓手技の施設設備;入院した病院の三次医療センターへの地理的な近さで補正した.

結 果

本研究の対象コホートは 51,591 例の患者であった.冠動脈血管造影法については,近隣住民の収入が最小五分位群から最大五分位群にまで増加すると,これに関連して施行率は 23%上昇し,待機時間も 45%減少した.収入と 1 年目までの死亡率とのあいだには,強い負の関連が認められた(p<0.001).近隣住民の収入の中央値が $10,000 増加するごとに,1 年目までに死亡するリスクは 10%ずつ低下した(補正ハザード比,0.90;95%信頼区間,0.86~0.94).

結 論

オンタリオ州では,カナダの国民皆保健医療制度にもかかわらず,社会経済学的状態が,急性心筋梗塞後の 1 年目までの死亡率にだけでなく,心臓の専門医療サービスを受ける機会にも大きな影響を与えていた.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 341 : 1359 - 67. )