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July 15, 1999 Vol. 341 No. 3

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急性結腸偽性閉塞症の治療としてのネオスチグミン
Neostigmine for the Treatment of Acute Colonic Pseudo-Obstruction

R.J. PONEC, M.D. SAUNDERS, AND M.B. KIMMEY

背景

急性結腸偽性閉塞症-すなわち,機械的閉塞を伴わない結腸の大幅な拡張-は,術後あるいは重大な疾病に伴って続発することがある.保存的治療で軽快することもあるが,ときには,腸の虚血および穿孔を防ぐために結腸の内視鏡的減圧が必要になることがある.対照群を設定しない研究において,この腸閉塞症に対してネオスチグミンが有効な治療法の一つであることが示唆されている.

方 法

急性結腸偽性閉塞症の患者 21 例を対象として試験を行った.これらのすべての患者には,腹部膨満が認められ,X 線写真で結腸の腸管拡張像とともに盲腸の直径が 10 cm 以上になっているのが確認された.そして,保存的治療に対する反応が治療開始後 24 時間以内にはみられなかった.これらの患者の 11 例をネオスチグミンの 2.0 mg の静脈内投与に,残りの 10 例を生理的食塩水の静脈内投与に無作為に割り付けた.患者の治療割り付けを知らされていなかった医師によって,臨床効果(速やかな放屁または排便と腹部膨満の軽減と定義した),腹囲,および X 線写真による結腸の測定結果が記録された.患者が初回治療に反応しなかった場合には,3 時間後に非盲検でネオスチグミンを投与可能とした.

結 果

速やかな結腸の減圧は,ネオスチグミンの投与を受けた患者では 11 例中の 10 例に認められたのに対して,プラセボの投与を受けた 10 例の患者にはまったく認められなかった(p<0.001).治療に反応するまでの時間は,中央値で 4 分(範囲,3~30 分)であった.初回投与で治療に反応しなかったプラセボ群の 7 例とネオスチグミン群の 1 例の患者が,非盲検のネオスチグミンの投与を受けた;この投与を受けたすべての患者で結腸の減圧が得られた.ネオスチグミンの初回投与に反応した患者うちの 2 例には,結腸の膨満が再発したために結腸の内視鏡的減圧が必要であった;このうちの 1 例には,最終的に結腸の部分切除術が行われた.ネオスチグミンの副作用としては,腹痛,唾液の過剰分泌,および嘔吐などが認められた.症候性の除脈が 2 例の患者に発現し,アトロピンによる治療が行われた.

結 論

保存的治療に不応であった急性結腸偽性閉塞症の患者に対しては,ネオスチグミンの治療で,結腸の速やかな減圧が得られる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 341 : 137 - 41. )