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July 15, 1999 Vol. 341 No. 3

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Ehrlichia Ewingii,ヒトエーリキア症の新たに確認された病因菌
Ehrlichia Ewingii, a Newly Recognized Agent of Human Ehrlichiosis

R.S. BULLER AND OTHERS

背景

ヒトエーリキア症は,最近確認された,マダニ媒介性の感染症である.ヒトには 4 種類の菌種が感染する:Ehrlichia chaffeensisE. sennetsuE. canis,およびヒト顆粒球性エーリキア症の病因菌.

方 法

エーリキア症が疑われた 413 例から採取した末梢血の白血球を,エーリキア属の広域および菌種特異的なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて検査した.分離された菌種の同定は,菌種特異的 PCR 法と,エーリキア属の 16S リボソーム RNA をコードしている遺伝子の塩基配列決定法を用いて行った.血清学的反応は,ウェスタンブロット法を用いて検討した.

結 果

4 例で,広域 PCR 法で白血球にエーリキア属の DNA が検出されたが,E. chaffeensis とヒト顆粒球性エーリキア症の原因菌に特異的 PCRでは検出されなかった.これらの PCR 産物のヌクレオチド配列は,E. ewingii,すなわちイヌの顆粒球性エーリキア症の原因菌の一つとしてすでに報告されている菌種のヌクレオチド配列と一致していた.4 例は,全例がミズーリ州の住人で,1996 年,97 年,98 年の 5 月~8 月に,発熱,頭痛,血小板減少で受診し,白血球減少については,認めた例も認めなかった例もいた.全例にマダニとの接触歴があり,3 例は免疫抑制療法を受けていた.3 例から得られた回復期の血清検体には,E. chaffeensisE. canis の抗原に反応する抗体が検出されたが,これは E. chaffeensis 感染症のヒトから得られる抗体とはパターンが異なり,実験的に E. ewingii に感染させたイヌの抗体と類似していた.2 例からは,好中球にマダニの桑実胚が検出された.4 例はすべて,ドキシサイクリンによる治療が成功した.

結 論

今回の知見から,ヒトにおける E. ewingii 感染のエビデンスが示された.E. ewingii 感染に関連する疾患は,臨床的には,E. chaffeensis やヒト顆粒球性エーリキア症の原因菌によって引き起される感染症とは鑑別できない可能性がある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 341 : 148 - 55. )