December 30, 1999 Vol. 341 No. 27
癌治療の臨床試験における 65 歳以上の患者の不十分な反映
Underrepresentation of Patients 65 Years of Age or Older in Cancer-Treatment Trials
L.F. HUTCHINS, J.M. UNGER, J.J. CROWLEY, C.A. COLTMAN, JR., AND K.S. ALBAIN
臨床試験において女性および黒人が十分に反映されていないということがいくつかの検討で示されたので,今日では,これらの人々の試験への組み入れが連邦政府による行政的な必須要件となっている.しかしながら,高齢者が臨床試験に参加している程度についてはほとんどわかっていない.そこで,われわれは,癌治療に関する臨床試験における 65 歳以上の患者の組み入れ割合を調査した.
1993~96 年に実施された南西部腫瘍学グループ(Southwest Oncology Group:SWOG)の治療試験,164 試験に連続して組み入れられた 16,396 例の患者のデータを,性別,人種(黒人または白人),および 65 歳未満または 65 歳以上の年齢によって解析した.これらの項目について,試験における患者割合を,1990 年の米国国勢調査(1990 U.S. Census),および 1992~94 年に実施された米国国立がん研究所の監視,疫学,および最終結果のプログラム(the National Cancer Institute's Surveillance, Epidemiology, and End Results Program)から得られた癌患者の一般的な集団における患者割合と比較した.今回の解析には,15 種類の癌種を組み入れた.
南西部腫瘍学グループの試験に組み入れられた女性および黒人の全体の割合は,米国の癌患者集団の推定割合と同程度あるいは等しかった(それぞれの集団における割合は,女性が 41%および 43%;黒人が 10%および 10%).これとは対照的に,65 歳以上の患者は,すべての試験をまとめた全体でも(25% 対 63%,p<0.001),あるいはリンパ腫を除いた 14 種類の癌種の癌種別試験でも,十分に反映されていなかった.この不十分な反映は,とくに乳癌を対象とした治療の試験で顕著であった(9% 対 49%,p<0.001).さらに,70 歳以上の患者のデータを対象として解析した場合にも,高齢の患者を除外して行われた 15 試験を除いて解析した場合にも,そして,地域ベースと研究施設での組み入れとを別々に解析した場合にも,同様の結果が得られた.
癌治療に関する試験では,実質的に,65 歳以上の患者が十分に反映されていない.この理由を解明して,このような不十分な反映を是正するような方針を採用すべきである.