The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

September 2, 1999 Vol. 341 No. 10

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

ヘモクロマトーシス遺伝子の病因性突然変異を有していない成人における遺伝性ヘモクロマトーシス
Hereditary Hemochromatosis in Adults without Pathogenic Mutations in the Hemochromatosis Gene

A. PIETRANGELO AND OTHERS

背景

成人の遺伝性ヘモクロマトーシスは,一般的には,第 6 染色体の短腕上に存在しているヘモクロマトーシス(HFE)遺伝子の突然変異によって特徴つけられている.この患者のほとんどが,282(C282Y)の位置のシステインがチロシンに置換されている.

方 法

今回,われわれは,ヘモクロマトーシスと識別できない遺伝性の鉄の過剰負荷が存在するにもかかわらず,HFE 遺伝子の明らかな病因性突然変異を認めない者を含むイタリア出身の大家系について,検討を行った.この家系の生存者 53 例に対して,第 6 染色体のマイクロサテライト分析および HFE 遺伝子の直接塩基配列決定などの生化学的,組織学的,および遺伝学的検査を行った.

結 果

この家系のメンバー 53 例のうち,15 例に,血清フェリチン濃度の異常, 50%以上のトランスフェリン飽和度の増加,あるいはその両方が認められた.さらに,15 例のうち 13 例には,体内の総鉄含量の増加が認められ,臨床評価と肝生検に基づいた診断が下されて,鉄除去療法が行われていた.残りの 2 例は,どちらも小児で,肝生検も鉄除去療法も行われていなかった.HFE 遺伝子の C282Y 突然変異は,これら 15 例のメンバーのすべてに認められなかった; 15 例中 5 例には(健常血縁者の 5 例と同様に),この遺伝子の別の突然変異,すなわち 63 の位置のヒスチジンのアスパラギン酸への置換が認められたが,この突然変異のホモ接合は 1 例もいなかった.この家系全員の HFE 遺伝子の全塩基配列を決定した結果,これ以外の突然変異は発見されなかった.マイクロサテライト分析からは,ヘモクロマトーシスの表現型と,第 6 染色体の短腕,すなわち HFE 遺伝子部位との関連は何も認められなかった.

結 論

遺伝性ヘモクロマトーシスは,ヘモクロマトーシス遺伝子の病因性突然変異を有していない成人にも発症することがある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 341 : 725 - 32. )