September 23, 1999 Vol. 341 No. 13
台湾におけるエンテロウイルス 71 感染症の流行
An Epidemic of Enterovirus 71 Infection in Taiwan
M. HO AND OTHERS
エンテロウイルスは,手足口病(手,足,および口腔粘膜の水疱性病変を特徴とする)やヘルパンギーナの大発生を引き起すことがあるが,通常は生死にかかわるような病態に陥ることはない.台湾では,1998 年に,エンテロウイルス 71 感染症の流行によって何千人もの人々に手足口病およびヘルパンギーナが発症し,死亡例もみられた.
今回,われわれは,この大発生を疫学的側面から評価した.通院患者における手足口病またはヘルパンギーナの症例については,818 例が伝染病監視医師によって台湾保健省に報告された.入院患者で重症例は,医療センターおよび地域病院の 40 施設から報告された.ウイルスの分離同定は,10 施設の病院検査室と保健省によって行われた.
本ウイルス感染症の 2 回の流行において,129,106 例の手足口病またはヘルパンギーナが伝染病監視医師から報告されたが,この報告患者数は,推定総患者数のおそらく 10%未満に相当するものと考えられる.重症例は 405 例であったが,そのほとんどが 5 歳以下の小児であった;重症例は台湾全域にわたってみられた.合併症としては,脳炎,無菌性髄膜炎,肺水腫または肺出血,急性弛緩性麻痺,および心筋炎などが発症していた.78 例の患者が死亡したが,そのうちの 71 例(91%)は 5 歳以下の小児であった.また,死亡患者の 65 例(83%)に肺水腫または肺出血が認められた.ウイルスが分離された患者においてエンテロウイルス 71 が検出されたのは,合併症を伴っていなかった手足口病またはヘルパンギーナの外来患者の 48.7%,生存入院患者の75%,死亡患者の 92%であった.
1998 年のエンテロウイルス感染症の流行時には,台湾に数種類のエンテロウイルスが広く蔓延していたが,エンテロウイルス 71 による感染症は,ほとんどの重篤な臨床徴候とほぼすべての死亡に関連していた.死亡患者のほとんどは幼い小児で,その多くは肺水腫または肺出血による死亡であった.