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April 27, 2000 Vol. 342 No. 17

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マレーシアの養豚業者におけるニパウイルス脳炎の臨床特徴
Clinical Features of Nipah Virus Encephalitis among Pig Farmers in Malaysia

K.J. GOH AND OTHERS

背景

1998 年 9 月~99 年 6 月に,新しく発見されたパラミクソウイルスの 1 種であるニパウイルスによる重症のウイルス脳炎が,マレーシアで流行した.

方 法

今回,われわれは,クアラルンプールの医療センターの 1 施設に収容されたニパウイルス脳炎の患者の臨床特徴について検討した.ニパウイルス脳炎の患者の定義は,疫学的,臨床的,脳脊髄液,および神経画像検査の所見に基づいて行った.

結 果

1999 年の 2 月~6 月までに収容されたニパウイルスの感染患者は 94 例であった(平均年齢,37 歳;男性患者と女性患者の比,4.5 人 対 1 人).これらの患者の 93%に豚との直接接触があったが,多くの場合,発症するまでの 2 週間のあいだに接触していた.このことは,このウイルスの感染経路には豚からヒトへの直接伝播の経路が存在し,その潜伏期間が短いということを示唆している.患者の主な症状は,発熱,頭痛,目眩,および嘔吐であった.また,意識レベルの低下と顕著な脳幹機能障害が 52 例(55%)の患者に出現した.特徴的な臨床所見としては,分節性ミオクローヌス,反射消失と筋緊張低下,高血圧,および頻拍などが認められた.したがって,脳幹および上頸部脊髄が影響を受けているのではないかということが考えられる.脳脊髄液の初回検査の結果は 75%の患者で異常であった.ヘンドラウイルスに対する抗体は,この検査を行った 83 例の患者の 76%において,血清あるいは脳脊髄液から検出された.30 例(32%)の患者が,全身状態の急速な悪化によって死亡した.不良な予後との関連が認められた因子は,人形の目反射の異常と頻拍であった.死因は,おそらく,脳幹が重大な影響を受けたことによるものであろうと考えられた.初発時には軽症であった患者の 3 例に,神経障害が再発した.最終的に完全に回復した患者は 50 例(53%)で,残りの 14 例(15%)には神経障害が残存した.

結 論

ニパウイルスは,重症の非常に進行の速い脳炎を引き起す.この脳炎は,死亡率が高く,脳幹に影響が及んでいることをうかがわせるような特徴を有している.そして,このウイルスへの感染は,最近の豚との接触と関連がある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2000; 342 : 1229 - 35. )