January 6, 2000 Vol. 342 No. 1
分娩時の抗生剤予防投与の時代における B 群連鎖球菌疾患
Group B Streptococcal Disease in the Era of Intrapartum Antibiotic Prophylaxis
S.J. SCHRAG AND OTHERS
B 群連鎖球菌感染症は,新生児死亡の主原因の一つであるとともに,妊娠女性や高齢者においても発症する.新生児については,分娩時に抗生剤を予防投与することによって,数多くの新生児がこの疾患に罹患するのを防ぐことが可能である.このような予防努力は 1990 年代に増加した.1996 年には,分娩時の抗生剤投与の候補の胎児を識別するためのリスクに基づいた方法あるいはスクリーニングに基づいた方法の利用が,合意の得られたガイドラインによって推奨されることとなった.今回,われわれは,このような予防努力の効果を評価することを目的として,B 群連鎖球菌疾患の 1993~98 年までの発症率の傾向について分析した.
能動的な地域ベースの監視調査が,八つの州から抽出した郡において実施された.患児の定義は,通常は無菌である部位からの B 群連鎖球菌属の分離であった.B 群連鎖球菌疾患の人種別発症率は,国勢調査と生産児のデータを用いて求めた;得られた結果の全国への投影では,人種による補正を行った.
生後 7 日未満の新生児における B 群連鎖球菌疾患は,全 7,867 件の B 群連鎖球菌感染症のうちの 20%を占めていた.生後早期に発症する新生児感染症の発症率は,1993 年には生産児 1,000 人当り 1.7 人であったのが,1998 年には 1,000 人当り 0.6 人と,65%低下した.白人新生児と比較したときの黒人新生児で生後早期に発症する B 群連鎖球菌疾患の過度の発症率は,75%減少した.今回の調査結果を米国全体に投影すると,分娩時に抗生剤を投与することによって,1998 年には,生後早期に発症する感染症は 3,900 件,新生児の死亡は 200 件予防されたと推定される.妊娠中の少女および女性においては,侵襲的な B 群連鎖球菌疾患の発症率が 21%低下した.非妊娠成人では,この発症率の低下は認められなかった.
新生児における B 群連鎖球菌疾患の発症率は,検討した 6 年間のあいだに大きく低下していたが,これには黒人新生児における B 群連鎖球菌感染症の過度の発症率の大きな低下も含まれている.これらの発症率の改善は,分娩時の抗生剤の予防投与を広く普及させることによって周産期疾患の予防を目指した努力と一致している.