HLA 一致同胞からの臍帯血または骨髄の移植を受けた小児における移植片対宿主病
Graft-versus-Host Disease in Children Who Have Received a Cord-Blood or Bone Marrow Transplant from an HLA-Identical Sibling
V. ROCHA AND OTHERS
臍帯血は,造血幹細胞移植における骨髄の代替手段として,移植片対宿主病(GVHD)のリスクを低下させる可能性がある.
1990~97 年までの期間に HLA(組織適合性抗原)一致同胞から臍帯血移植を受けた 113 例のレシピエントの記録を調査し,同期間に HLA 一致同胞から骨髄移植を受けた 2,052 例のレシピエントの記録と比較した.今回の研究対象集団は 15 歳以下の小児とした.GVHD の発生率,造血機能の回復率,および生存率の比較については,Cox 比例ハザード回帰を用いて交絡の可能性のある要因について補正した.
臍帯血移植を受けたレシピエントは,骨髄移植を受けたレシピエントよりも,低年齢(年齢の中央値,5 歳 対 8 歳;p<0.001)かつ低体重(体重の中央値,17 kg 対 26 kg;p<0.001)で,GVHD の予防療法としてのメトトレキサートの投与を受ける可能性が低かった(28% 対 65%,p<0.001).多変量解析の結果から,臍帯血移植を受けたレシピエントでは,急性 GVHD(相対リスク,0.41;p = 0.001)および慢性 GVHD(相対リスク,0.35;p = 0.02)のリスクが低いということが示された.また,臍帯血移植後の造血機能の回復については,移植後 1 ヵ月間の好中球数および血小板数の回復の可能性が,骨髄移植後の回復と比較して有意に低かった(好中球数および血小板数のそれぞれの相対リスク,0.40 [p<0.001],0.20 [p<0.001]).死亡率については 2 群とも同程度であった(臍帯血移植を受けたレシピエントの死亡の相対リスク,1.15;p = 0.43).
HLA 一致同胞から臍帯血移植を受けたレシピエントは,HLA 一致同胞から骨髄移植を受けたレシピエントよりも,急性および慢性の GVHD の発生率が低い.