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June 22, 2000 Vol. 342 No. 25

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鎌状赤血球症における急性胸部症候群の原因と転帰
Causes and Outcomes of the Acute Chest Syndrome in Sickle Cell Disease

E.P. VICHINSKY AND OTHERS

背景

急性胸部症候群は,鎌状赤血球症患者の一番の死亡原因である.しかし,その原因がほとんどわかっていないために,支持療法による治療しか行われていない.進んだ診断技術を用いたパイロット試験において,この急性胸部症候群の患者では,感染症と脂肪塞栓症が過小診断されているということが示唆されている.

方 法

今回実施した 30 の医療センターの試験において,われわれは,鎌状赤血球症の 538 例の患者に発現した 671 件の急性胸部症候群のエピソードを解析し,急性胸部症候群の原因,転帰,および治療効果についての検討を行った.さらに,適合輸血,気管支拡張薬,および気管支鏡検査などの治療プロトコールの評価も行った.採取した血液および気道分泌物の検体は,抗体検査,培養,DNA 検査,および組織病理学検査のために中央検査室に送付した.

結 果

ほぼ半数近くの患者は,最初は,別の理由,主に疼痛のために入院していた.患者が急性胸部症候群と診断された時点では,低酸素症,ヘモグロビン値の低下,および進行性の多葉性肺炎が発現していた.患者の平均入院期間は 10.5 日間であった.機械的人工呼吸が必要であった患者は 13%,死亡した患者は 3%であった.年齢が 20 歳以上であった患者は,それよりも低年齢の患者よりも重症であった.また,神経系のイベントは 11%の患者に発現し,これらの患者の 46%は呼吸不全に陥った.治療については,表現型が適合した輸血で,酸素供給が改善され,輸血による同種免疫率も 1%にすぎなかった.気管支拡張薬では,この治療を受けた患者の 1/5 に臨床所見の改善が認められた.また,機械的人工呼吸が必要であった患者は 81%が回復した.急性胸部症候群の原因については,全エピソードでは 38%で,完全なデータが得られたエピソードについては 70%で特定することができた.特定できた原因は,肺の脂肪塞栓症と 27 種類の感染性病原体であった.死亡した患者は 18 例であったが,もっとも多かった死因は肺塞栓と感染性気管支肺炎であった.また,感染症については,これらの死亡の 56%では寄与因子にもなっていた.

結 論

鎌状赤血球症の患者に発現する急性胸部症候群は,脂肪塞栓症および感染症,とくに地域で蔓延している肺炎によって引き起されるのが一般的である.さらに,この急性胸部症候群は,高年齢および神経症状が発現した患者ではしばしば呼吸不全に進行する.輸血および気管支拡張薬の治療によって酸素供給が改善される.また,呼吸不全に陥った患者でも,より積極的な治療によって,ほとんどの患者で回復が見込める.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2000; 342 : 1855 - 65. )