January 13, 2000 Vol. 342 No. 2
結腸直腸癌の若年患者における腫瘍マイクロサテライトの不安定性と臨床転帰
Tumor Microsatellite Instability and Clinical Outcome in Young Patients with Colorectal Cancer
R. GRYFE AND OTHERS
結腸直腸癌は,二つの異なる突然変異の経路にて発生する; すなわち,マイクロサテライトの不安定性または染色体の不安定性である.今回,われわれは,マイクロサテライトの不安定性の経路から発生する結腸直腸癌には,臨床転帰に影響を及ぼすような特有の臨床特性があるという仮説の検証を行った.
マイクロサテライトの不安定性について,地域住民をベースとした 607 例の連続した患者(診断時の年齢が 50 歳以下)の結腸直腸癌の病理標本を検討した.高頻度に認められるマイクロサテライトの不安定性が特徴となっていた結腸直腸癌の患者の臨床特性と生存を,マイクロサテライトが安定であった結腸直腸癌の患者のこれらの特性と比較した.
高頻度のマイクロサテライトの不安定性は,607 例の結腸直腸癌患者の 17%に認められ,多変量解析では,マイクロサテライトの不安定性が,腫瘍の病期を含むすべての標準的な予後因子と独立して,生存上のアドバンテージと有意に関連していた(ハザード比,0.42; 95%信頼区間,0.27~0.67; p < 0.001).さらに,マイクロサテライトの不安定性が高頻度に認められた結腸直腸癌では,腫瘍の浸潤の深さにはかかわらず,局所のリンパ節転移(オッズ比,0.33; 95%信頼区間,0.21~0.53; p < 0.001),あるいは遠隔臓器への転移(オッズ比,0.49; 95%信頼区間,0.27~0.89; p = 0.02)が起りにくかった.
結腸直腸癌の高頻度なマイクロサテライトの不安定性は,比較的好ましい転帰の独立した予測子であるだけでなく,転移の確率を低下させている.