October 19, 2000 Vol. 343 No. 16
不安定冠動脈疾患の長期死亡率に関連した心筋障害マーカーと炎症マーカー
Markers of Myocardial Damage and Inflammation in Relation to Long-Term Mortality in Unstable Coronary Artery Disease
B. LINDAHL, H. TOSS, A. SIEGBAHN, P. VENGE, AND L. WALLENTIN
不安定冠動脈疾患の患者では,死亡の短期リスクと,トロポニン T(心筋障害のマーカーの一つ)と C 反応性蛋白(CRP)およびフィブリノゲン(炎症のマーカー) の血中濃度とのあいだに関連性があることが認められている.冠動脈疾患の不安定期におけるフラグミンの試験(Fragmin during Instability in Coronary Artery Disease trial)の追跡調査の延長期間に得られた情報を用いて,心臓に関連した死因で死亡する長期リスクの予測因子として,トロポニン T,CRP,およびフィブリノゲンの血中濃度と,その他のリスク指標の有用性を評価した.
不安定冠動脈疾患に対する低分子量ヘパリンの臨床試験に組み入れられた 917 例の患者を対象として,試験組入れ時の CRP とフィブリノゲンの血中濃度と,組入れ後 24 時間目までのトロポニン T の最高血中濃度について分析した.これらの患者の平均追跡調査期間は 37.0 ヵ月間(範囲,1.6~50.6 ヵ月間)であった.
追跡調査期間に心臓に関連した死因で死亡した患者は,トロポニン T の最高血中濃度が 0.06 μg/L 未満の 173 例では 1.2%であったのに対して,トロポニン T の最高血中濃度が 0.06~0.59 μg/L であった 367 例では 8.7%,0.60 μg/L 以上の 377 例では 15.4%であった(それぞれ,p = 0.007 および p = 0.001).CRP については,心臓に関連した死因による死亡率は,その血中濃度が 2 mg/L 未満の 314 例では 5.7%,2~10 mg/L の 294 例では 7.8%,10 mg/L を超えていた 309 例では 16.5%であった(それぞれ,p = 0.29 および p = 0.001).フィブリノゲンについては,心臓に関連した死因による死亡率は,その血中濃度が 3.4 g/L 未満の 314 例では 5.4%,3.4~3.9 g/L の 300 例では 12.0%,4.0 g/L 以上の 303 例では 12.9%であった(それぞれ,p = 0.004 および p = 0.69).多変量解析では,トロポニン T と CRP の血中濃度が,心臓に関連した死因による死亡のリスクの独立した予測因子であった.
不安定冠動脈疾患では,トロポニン T と CRP の血中濃度の上昇が,心臓に関連した死因による死亡の長期リスクと強く関連している.これらのマーカーは独立した危険因子であり,それらの作用は互いに相加的であり,リスクに関する他の臨床指標に対しても相加的である.