November 2, 2000 Vol. 343 No. 18
心理的要因と潜在性の冠動脈疾患との相関の欠如
Lack of Correlation between Psychological Factors and Subclinical Coronary Artery Disease
P.G. O'MALLEY, D.L. JONES, I.M. FEUERSTEIN, AND A.J. TAYLOR
心理的変数と臨床的に症候性の冠動脈疾患の関係については広汎に研究が行われているが,このような関係の可能性のあるメカニズムは推測の域を脱していない.今回,われわれは,複数の心理的変数と潜在性の冠動脈疾患との関係について検討し,そのような変数のアテローム発生における潜在的な役割についての評価を行った.
米国陸軍の 39~45 歳までの冠動脈疾患の病歴がない現役職員で,参加の同意の得られた連続した 630 例を対象として,前向き研究を実施した.参加者のそれぞれに対して,うつ状態,不安,精神症状の身体症状への転換,敵意,およびストレスについて評価した.潜在性冠動脈疾患の鑑別は,電子線コンピュータ断層撮影法(電子線 CT)を用いて行った.
対象者の平均(±SD)年齢は 42±2 歳であった;82%が男性で,72%が白人であった.冠動脈の石灰化の有病率は 17.6%であった(平均の石灰化スコア,10±49).既往あるいは現在の精神障害の有病率は 12.7%であった.冠動脈の石灰化スコアとうつ状態(r=-0.07,p=0.08),不安(r=-0.07,p=0.10),敵意(r=-0.07,p=0.10),あるいはストレス(r=-0.002,p=0.96)のスコアとのあいだには,相関性は認められなかった.これに対して,精神症状の身体症状への転換(持続的な身体症状の数と重症度)には,年齢および性別で補正しても,石灰化スコアとの負の相関性が認められた(r=-0.12,p=0.003).また,多変量ロジスティック回帰モデルでも,身体症状への転換のスコアには,4(とり得るスコアは 26 まで)よりも大きなスコアと,冠動脈の石灰化の不在とのあいだに独立した関連があることが認められた(オッズ比,0.49;95%信頼区間,0.25~0.96).
今回得られたわれわれのデータは,うつ状態,不安,敵意,およびストレスは冠動脈の石灰化には関係がないこと,そして,精神症状の身体症状への転換が石灰化の不在と関連していることを示している.