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November 16, 2000 Vol. 343 No. 20

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多発性硬化症における再燃と障害の進行
Relapses and Progression of Disability in Multiple Sclerosis

C. CONFAVREUX, S. VUKUSIC, T. MOREAU, AND P. ADELEINE

背景

多発性硬化症が不可逆性の障害に進んでいく時間的過程に対して,発症および再燃のパターンがなんらかの影響を及ぼしている可能性について議論がある.

方 法

罹病期間が平均で 11±10 年間であった多発性硬化症の患者 1,844 例を対象として,多発性硬化症の臨床上の発症時期,初発時の経過(再燃-寛解または進行)とその後の経過(再燃-寛解,再燃進行,または初発進行),再燃の回数,不可逆的障害が発現した時期,および進行性の不可逆的障害に進んでいく時間的過程について検討した.障害の重症度と進行を測定する評価尺度には,Kurtzke の障害状態尺度(the Kurtzke Disability Status Scale)の三つのスコアを用いた(スコアの範囲は 0~10 で,重症の障害ほどスコアは高値になる):スコア 4(歩行能力は制限されているが,介助なしあるいは休まずに 500 m を超えて歩くことができる),スコア 6(身体の片側を支えてもらって歩くことはできるが,休まずに 100 m は歩行できない),スコア 7(壁にもたれかかったり身体を支える支持用具を用いたりして歩行することはできるが,休まずに 10 m は歩行できない).不可逆的障害が発現するまでの時間に対する再燃の影響は,Kaplan–Meier 法を用いて検討した.

結 果

多発性硬化症の発症から障害尺度のスコアが 4,6,および 7 に評価されるまでの時間の中央値は,多発性硬化症が発症したときに再燃–寛解の経過をたどった 1,562 例の患者(4,6,7 のスコアに評価されるまでの時間,11.4 年,23.1 年,33.1 年)のほうが,発症から進行していった 282 例の患者(それぞれ 0.0 年,7.1 年,13.4 年)よりも長かった(すべての比較で p<0.001).これとは対照的に,スコアが 4 から 6 に悪化するまでの時間は 2 群で同程度であった(5.7 年および 5.4 年,p = 0.74).進行性の不可逆性障害に進んでいく時間的経過は,初発進行型の多発性硬化症の患者については,再燃の繰り返しの有無による影響を受けなかった.

結 論

多発性硬化症の患者の病態が不可逆性の障害へと進行していくことに対して,再燃は有意な影響を及ぼしていない.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2000; 343 : 1430 - 8. )