無症候性成人を対象とした結腸直腸癌のスクリーニングのための大腸内視鏡検査の施行
Use of Colonoscopy to Screen Asymptomatic Adults for Colorectal Cancer
D.A. LIEBERMAN AND OTHERS
結腸直腸癌のスクリーニングにおける大腸内視鏡検査の役割は,明確にはされていない.
そこで,在郷軍人医療センターの 13 施設において,進行結腸腫瘍の有病率と発生部位,また,遠位結腸に腫瘍を有する,あるいは有しない無症候性の患者(年齢範囲,50~75 歳)における近位結腸の進行腫瘍のリスクを調べることを目的として,大腸内視鏡検査を実施した.進行結腸腫瘍の定義は,直径 10 mm 以上の腺腫,繊毛状腺腫,高度異形成の腺腫,または浸潤癌とした.なお,複数の腫瘍性病変を有していた患者については,もっとも進行した病変に基づいて進行結腸腫瘍の分類を行った.
本研究では,組み入れのためのスクリーニングを 17,732 例に行い,3,196 例を研究に組み入れた.このうち 3,121 例(97.7%)で,結腸全域の検査を行うことができた.これらの患者の平均年齢は 62.9 歳で,96.8%は男性であった.大腸内視鏡検査で 1 個以上の腫瘍性病変が発見された患者は 37.5%で,直径が 10 mm 以上の腺腫または繊毛状腺腫が 7.9%,高度異形成の腺腫が 1.6%,浸潤癌が 1.0%であった.左結腸曲よりも遠位の結腸部分にポリープが発見されなかった 1,765 例では,48 例(2.7%)に,近位結腸に進行腫瘍の発生が認められた.一方,遠位結腸に大きな腺腫(≧10 mm)または小さな腺腫(<10 mm)が発見された患者では,この遠位結腸に腺腫が発見されなかった患者よりも,近位結腸に進行腫瘍が発生している傾向が高かった(オッズ比,≧10 mm の腺腫で 3.4 [95%信頼区間,1.8~6.5],<10 mm の腺腫で 2.6 [95%信頼区間,1.7~4.1]).しかし,近位結腸に進行腫瘍が発見された 128 例の 52%には,遠位結腸に腺腫は発生していなかった.
大腸内視鏡検査を用いたスクリーニングによって,無症候性成人の進行結腸腫瘍を発見することができる.そのような腫瘍の多くは,S 状結腸鏡検査では発見されないと考えられる.